第六十六話 婚姻と元服その五
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「あれはあまり」
「深酒はでおじゃるな」
「はい、それは」
どうもと言うのだった。
「毒になりますから」
「飲んでもでおじゃるな」
「あまり多くは」
その様にというのだ。
「されるべきです」
「そなたはそうしたことには厳しいでおじゃるな」
「毒はです」
「身体に入れてはならぬもの」
「左様ですから」
それ故にというのだ。
「酒もまた然りなので」
「過ぎぬことでおじゃるな」
「はい、酒は少しなら薬ですが」
それでもというのだ。
「多くなると」
「毒になるでおじゃる」
「それは彦五郎さまもご存知かと」
「神変鬼毒というでおじゃるが」
「酒呑童子ですな」
「これは人もでおじゃる」
氏真はしかとした声で話した。
「酒は少しなら薬であり」
「多くなると毒になります」
「全くでおじゃるな」
「ですから」
「過ぎぬことでおじゃるな」
「はい、ただ和上は」
竹千代は彼の般若湯即ち酒好きであることには少し苦笑いになってそのうえで氏真に話した。
「そちらは」
「お好きでおじゃるからな」
「ですから」
その為にというのだ。
「あの方も言われています」
「自分の様にはするなと」
「そこが和上のまたよきところですが」
「人間味でおじゃるな」
「それを感じられまして」
「その通りでおじゃるな、かく言うそなたも」
竹千代もというのだ。
「人間味に満ち溢れているでおじゃるよ」
「それがしもですか」
「穏やかで公平で」
「それで、ですか」
「よきものを持っているでおじゃる」
こう竹千代に言うのだった。
「それで、でおじゃる」
「それがしもですか」
「人間味があるでおじゃる、人間味がないと」
そうした者はというのだ。
「どうしてもでおじゃる」
「どれだけ優れた御仁でも」
「何かよくないでおじゃる」
「それが彦五郎様のお考えですか」
「麿が見る限り毛利殿は」
毛利元就、氏真は彼のことも話した。
「恐ろしい天魔でおじゃる」
「奸悪無限と言われていますな」
「謀神とも。確かに戦国の世には謀も必要でおじゃろうが」
「それでも毛利殿にもとなりますと」
「家臣なら絶対に用いたくなく」
「盟約を結ぶ大名ならば」
「何があろうともでおじゃる」
それこそという口調での言葉だった。
「麿は信じられぬでおじゃる」
「確かに。毛利殿はです」
「信用出来ぬでおじゃるな」
「武田殿と北条殿も謀は使われ」
竹千代はさらに話した。
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