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戦国異伝供書
第六十六話 婚姻と元服その二

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「有り難いことに」
「それでは」
「北条家からその姫が来て」
「式もですな」
「挙げてでおじゃる」
 そのうえでというのだ。
「麿も妻を得ることになるでおじゃる」
「左様でありますな」
「そなたと同じ位の時に」
「そうなられて」
「元服もでおじゃる」
 こちらもというのだ。
「することなったでおじゃる」
「そちらのこともですか」
「そうでおじゃる、では麿が今川家の主になれば」
「その時は」
「そなたは和上を継いで」 
 そうしてというのだ。
「今川家の執権でおじゃる」
「そうしてですね」
「何かと頼むでおじゃる」
「それでは」
「どうも麿は戦の采配が苦手でおじゃる」
 兵法は学んでいる、だが彦五郎はこのことを自覚しているのだ。それで兵法にも明るい竹千代に言うのだ。
「しかしそなたがいれば」
「戦の采配は」
「大丈夫でおじゃるな、朝比奈もいるでおじゃる」
「朝比奈殿は」
 彦五郎が名を出した彼についてだ、竹千代は身を乗り出す様にして述べた。
「まさに忠義一徹」
「素晴らしい者でおじゃるな」
「何があろうとも」
「今川家を裏切らぬでおじゃるな」
「はい、彦五郎様に何があろうとも」
「忠義を尽くしてくれるでおじゃるな」
「ですから」
 それ故にというのだ。
「あの方は」
「頼りにすべきでおじゃるな」
「采配も勇も備えておられるので」
「そのどちらも」
「ですから」
「わかっているでおじゃる、あの者もまた」
 朝比奈、彼もというのだ。
「重く用い頼りにするでおじゃる」
「それでは」
「あと今川の領地は豊かでおじゃるが」
 ここで彦五郎はこんなことも話した。
「より豊かに出来るでおじゃるな」
「といいますと」
「灌漑を進め」
 そうしてというのだ。
「今以上によい田を多く作り」
「田をですか」
「蜜柑や茶、豆をうんと作らせて民達に食わせ売って」
「儲けますか」
「あと街も商人達により楽に商売をさせて」
「そうしてですか」
「豊かに出来るでおじゃる」
 これが彦五郎の見立てだった。
「さすれば当家は実質百六十万石というでおじゃるが」
「その百六十万石の力を」
「実際に備えられるでおじゃる」
 そうなるというのだ。
「百万石から」
「それでは」
「政に励むでおじゃる」
「それが第一でありますな」
「百六十万石になれば四万の兵を動かせるでおじゃる」
 そうなるというのだ。
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