暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン ーBind Heartー
オワリトハジマリ
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真っ白に埋め尽くされる。
ほんの二、三秒で光は消えたが、俺はその間にすでに振り返って歩き出していた。
視界の端で、黒髪の少女だった者の本当の姿が、栗色の長いストレートヘアの美少女だったのを確認し、内心でわずかに驚いていた。
自身の本来の姿に困惑するプレイヤーの間を縫うように進み、俺は広場の端へと到着した。
本当の姿に戻ったいまの俺を、あまり多くのプレイヤーに見られるわけにはいかないのだ。
ーーそう、俺がこの、美しくも
穢
(
きたな
)
い世界に来た、本当の目的のために……。
『……以上で≪ソードアート・オンライン≫の正式サービスのチュートリアルを終了する。プレイヤー諸君のーー健闘を祈る』
それを最後の一言に、真紅のローブ姿が空を埋めるシステムメッセージに溶け込むように同化していく。肩が、胸が、そして両手と足が血色の水面に沈み、最後にひとつだけ波紋が広がった。直後、天空一面に並ぶメッセージもまた、現れた時と同じように消滅した。
そしてーー一万のプレイヤー集団が、しかるべき反応を見せた。
「嘘だろ……なんだよこれ、嘘だろ!」
「ふざけるなよ! 出せ! ここから出せよ!」
「こんなの困る! この後約束があるのよ!」
「嫌ああ! 帰して! 帰してよおおお!」
悲鳴。怒号。絶叫。罵声。懇願。そして咆哮。
たった数十分でゲームプレイヤーから囚人へと変えられてしまった人間たちは、頭を抱えてうずくまり、両手を突き上げ、抱き合い、あるいは罵り合った。
その無数の叫びが渦巻く喧騒を、俺はどこか遠い目で見ていた。
全部、現実なんだよ。
これはゲームであり、牢獄であり、そして墓場なのだ。
だから、俺はまだ死ねない。死ぬわけにはいかない。あの目的を、果たすまでは。
ーー待ってろ、茅場晶彦。お前は……いや、お前もこのふざけた世界も、全部、俺がこの手で、
俺の手の中で、鏡が砕ける。それは弾けて無数のポリゴンとなり、光を散らして消滅した。
ーーーー絶対に、殺してやる。
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