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まさに目糞鼻糞
第七章

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「そう言うか」
「そう言うかって言われても」
「事実だし」
「阪神以外のチームが優勝するかな」
「お父さん、広島は来年無敵なのよ」
「だったらね」
「横浜とかはないわよ」
 こう父に言う、だが。
 父は二人に冷静に述べた。
「お前達の言うことは本当に同じだな、僕の子供だから言うが兄妹だな」
「そうよね、応援しているチームが違うだけで」
 母もやれやれといった口調で言ってきた。
「兄妹よね」
「似た者同士だな」
「本当にそうよね」
「言っているレベルもな」
「それってあれかな」
 寿はホッケを食べつつ両親に話した。
「目糞鼻糞」
「そういうこと?」
 千佳も兄に続いた、ご飯を食べながら。
「つまりは」
「そう聞こえるよな」
「その通りだよ」
 父はまた自分の子供達に告げた。
「お前達それだよ」
「目糞鼻糞なんだ」
「そうかしら」
「全然違うけれど」
「カープと阪神全く違うのに」
「違うのは球団だけだろ」
 他は同じだとだ、父は言った。そうしてだった。
 子供達に極めて落ち着いた声で言った。
「ただ。お互いのチームを心から馬鹿にしたりお互いで負けても喧嘩をしないのはいいことだな」
「いや、広島嫌いじゃないから」
「阪神別に悪く思ってないから」
 二人共このことも同じだった。
「巨人と違ってね」
「悪いチームじゃないと思うよ」
「ならいい、だが喧嘩はするなよ」
 父はこう言ってご飯の後でビールを飲んだ、そうしてまた野球のことで言い合う子供達を横に母つまり自分の奥さんと話をした。その話は今度の休日のことだった。
 だが寿も千佳も両親の会話が聞かずお互いにまだ言い合うのだった。
「三十五年振りの日本一だよ」
「三十六年振りの日本一よ」
 あくまで言い合う、二人の心の中ではもう来年のペナントがはじまっていた。


まさに目糞鼻糞   完


                  2019・11・27
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