第六章
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「日本一を果たすからな、それにな」
「それに?」
「昭和六十年だからな」
寿はドレッシング、オニオンのそれをカリフラワーにかけてそうしてそのカリフラワーを食べながら年の話をした。
「昭和五十九年より後だろ」
「つまりカープよりっていうのね」
「日本一になってない年数は短いぞ」
「そこでそう言うのね」
「来年優勝してな」
そうしてというのだ。
「三十八年以上とか言わせないからな」
「言うわね、けれどね」
「それでもか」
「お兄ちゃんは来年その言葉を忘れられなくなるわよ」
千佳は自身に満ちた声で兄に告げた。
「その目でカープの日本一の胴上げを見てね」
「それでか」
「そうよ、カープの育成は常に行われているのよ」
育成のチームであり選手を育て続けているというのだ。
「それならね」
「来年もいい若手が出てか」
「それでね」
そのうえでというのだ。
「また勝つわよ」
「そう言うか」
「あとね」
千佳は寿にこうも言った。
「新監督に期待していていいわよ」
「何で僕が期待するんだよ」
阪神ファンの自分がとだ、寿は妹に言い返した。
「一体」
「だから巨人を叩きのめすからよ」
「だからか」
「期待していてね、それでね」
「優勝するからだな」
「目の前でカープの胴上げ見るの期待してね」
「誰が期待するんだ、とにかく来年で阪神は三十五年振り日本一だからな」
「お母さんまだ三才じゃない」
千佳はここで一緒に食べている母を見た、父も一緒だ。
「お父さん五才で」
「そっちはお母さん二才でお父さん四才だろ」
「それがどうかしたのよ」
「そのまま三十八年超えろ」
「超えるのはそっちよ」
兄妹で言い返す、だが。
これまで黙っていた父が自分の子供達に言った。
「二人共他のチームが優勝するとは考えないんだな」
「って何処が?」
「何処が優勝するのよ」
二人同時に父に言い返した。
「広島でしょ、来年は」
「阪神しかないじゃない」
「他のどのチームが優勝するの?」
「そんなチームないわよ」
「巨人はないしにしても」
父もアンチ巨人だ、そして何よりも彼もシリーズでストレートで四連敗したチームは翌年は優勝しないジンクスを知っているのだ。
「それでもな」
「中日とかヤクルトとか」
「あと横浜とかね」
「そうしたチームが優勝する可能性もあるだろ」
子供達に言うのだった。
「そうだろ」
「あるかな」
「ないわよね」
兄妹の意見はここでは一致した。
「どのチームがカープに勝てるか」
「無敵阪神に勝てるチームなんてないわよ」
「やれやれだな」
父は子供達の返事に心から呆れて述べた。
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