第五章
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「今令和だし」
「三十五年か」
「それだけ日本一になってないわ」
「最長は横浜の三十八年だからな」
一九六〇年に日本一になりそれから一九九八年に再びとなった、尚その間実に忌々しいことに巨人は数えることも馬鹿馬鹿しいまでに日本一になっている。
「それにな」
「近付いていってるわね」
「その記録更新前にか」
「優勝するわよ」
シリーズでもとだ、千佳はマヨネーズをかけたアスパラガスを食べつつ言い切った。
「精々その時を楽しみにしていることね」
「何が精々だ、来年は阪神優勝してな」
妹に何を言われてもこう言う、これが寿であり今も彼は彼だった。
「そしてな」
「日本一になるっていうのね」
「シリーズでも勝ってな」
「三回負けてるホークスにもなのね」
「まずスタンカさんに二日連続完封喰らってな」
これが最初の対決だ、俗に御堂筋決戦と呼ばれていた。
「二度目は甲子園で負けたな」
「よりによって本拠地でね」
「最後の最後でな」
即ち七試合目でというのだ。
「そうなったな」
「それで三度目は」
こちらの試合のことは千佳が話した。
「ものの見事にね」
「抗議の横での胴上げだったな」
「あの光景は凄かったわね」
「最高の対比だったか」
「絵になったわ」
千佳は嫌味抜きに悪意もなく心から言った。
「あれは」
「その三度の苦渋のリベンジだよ」
「それを果たすのね」
「ああ、ロッテが相手でもな」
寿は自分から阪神最大の持ちネタの一つを出した。
「勝つさ」
「あのシリーズね」
「あまりにも酷かったけれどな」
「あれは漫画よね」
千佳は梅干しを箸で取りながら応えた、彼女もよく知っている試合だからだ。この家では食事の時常に漬けものが出て梅干しもあるのだ。
「最早」
「漫画かよ」
「漫画じゃない、三十三対四よ」
この伝説の点差が出た。
「普通ないわよ」
「そのリベンジをな」
「するっていうのね」
「ロッテが出てもな」
「それで他のチームが出てもっていうのね」
「勝ってな」
そうしてというのだ、
「日本一にな」
「なるのね」
「絶対にな」
こう言うのだった。
「来年は」
「言うわね」
「言うさ、昭和六十年以来のな」
伝説のタイガースフィーバーの時以来のというのだ。
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