第五章
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「和田さん来てたの」
「もう帰ったからな」
妹にこう言ってやった。
「三十分いや四十分程前にな」
「そうなの」
「というかお前今日遅かったな」
「飲み会だって言ってたでしょ、会社の女子社員同士でね」
「そうだったんだな」
「いや、かなり飲んだわ」
見ればその顔は真っ赤になっている。
「本当に」
「相当飲んだな」
「ビールをね」
「あまり飲み過ぎるなよ」
「意識飛ぶまではっていうのね」
「二日酔いになる位にはな」
「わかってるわよ、しかしね」
妹は上着を脱ぎつつ俺に言ってきた。
「和田さんも相変わらずね」
「しょっちゅう金借りに来てな」
「働かないでね」
「それで図々しく上がり込んできてな」
「飲んで帰っていったのね」
「俺が仕方なく入れたけれどな」
「本当に相変わらずの人ね」
妹のことばは呆れたものだった。
「あの人は」
「ああ、しかしな」
「しかし?」
「昔はな」
高校まではだ。
「一本筋が通っていてな」
「いい人だったの」
「まだな、それがな」
「ああなったのね」
「仕方のない奴だ」
あいつに心から思っていることだ。
「どうしようもない奴だよ」
「そうよね、ただね」
「ああ、どうしようもない奴でもな」
無反省で酒好きで女好きで博打好き、そして無節操という奴だ。
「何かな」
「妙によね」
「犯罪はしないしな、確かにとんでもない奴でも」
どうしようもない奴でもだ。
「人としてとことんはな」
「踏み外してないわね」
「佳徳叔父さん思い出せよ」
俺達の親父の兄弟だ、どんな人かというと。
「酷かっただろ」
「仕事しないでね」
このことはあいつと同じではある。
「それでね」
「恩知らずでな」
「無責任でね」
「それでいて偉そうだっただろ」
「器も小さくて無神経で」
「仕事しないでそれでだから奥さんにも三行半でな」
それを衝き付けられて離婚された。
「ずっとお世話になっていたのに耳かきまで持って行っただったからな」
「耳かきまでお世話になってたのにね」
「そんなことを思わない恩知らずでな」
それにだ。
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