第百三十二話 二手に分かれその五
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「だからな」
「敵を殺すことが目的じゃないから」
「むしろその力をな」
「今は敵同士でも」
「その力を使いたい」
この世界の殆どを海で覆い眠らせている魔神を倒す為にというのだ。
「だからな」
「それ故に」
「俺はだ」
「敵兵が降らないと」
「降るまでな」
「捕えても放すのね」
「そうする、三国志演義の孔明ではないが」
その七度捕えて逃がさせた者だ、南蛮の王孟獲に対してそうして遂に彼そして彼が治める南蛮を心服させたのだ。
「俺は人を攻めているが」
「もっと言えば心をなのね」
「攻めている、九州の者達も心服させて」
そのうえでというのだ。
「あらためてだ」
「そうしてですね」
「俺達の力にする」
「そうだね、じゃあね」
「降らない奴は解き放つ」
「そしてまた戦って」
「そのうえで最後はな」
まさにと言うのだった。
「心服させる」
「それじゃあそうしていこうね」
「反対はしないか」
「だってね、私もわかっているから」
それでとだ、奈央は英雄に笑って話した。
「そこは」
「俺達の目的は何か」
「この浮島の統一はね」
それはというのだ。
「もう通過点ってね」
「そうだ、海の魔神を倒す」
「このことこそがね」
「俺達の目的だ」
まさにとだ、英雄は答えた。
「究極のな」
「ならね」
「ここで俺がこうすることもだな」
「手段の一つだと思うから」
「政としてのだな」
「そう、それでいいともね」
「思うからか」
「私も言わないよ」
こう英雄に話した。
「このことについてはね」
「そうか、ならな」
「捕えた兵が降ろうとしないなら」
「解き放っていく」
「そうするね」
「是非な」
英雄は実際にこの日も降った兵達を解き放った、彼等はその英雄を馬鹿にした様な笑みを浮かべて去った。しかし。
彼等は三度目で多くの者が降ってきた、四度目となると尚更で。
筑後を統一する時にはもう自分達から降りに来る者達もいた。そうして英雄は筑前に続いて筑後も掌握することになったが。
そこから肥前に行く時に謙二に言われた。
「まさに筑後は」
「心服だな」
「そうなりましたね」
「そうだな、城を攻めるよりもな」
「心を攻めるべきといいますが」
「実際にな」
「その通りですね」
謙二は確かな声で話した。
「まことに」
「そうだな、お陰でだ」
「筑後もですね」
「こうして手に入れただけでなくな」
「心からですね」
「掌握出来た、ではな」
「それならですね」
「安心して、叛乱の不安もなくな」
「肥前を攻められますね」
「この国の守りを固めてな」
筑後のというのだ。
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