第二十五話 イゼルローン方面軍
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のだろうか。シュトライト少将の顔を見たが少将も困惑している。
「覇気が強すぎるのですよ、戦意が有りすぎる。……ミューゼル大将の用兵家としての力量は帝国随一、まず負ける事など無いでしょうが覇気の強さを利用されると危ない」
「……」
公はもう笑ってはいない。むしろ沈鬱な表情をしている。
「イゼルローン方面軍の任務は基本的に要塞を中心にした防衛戦になります、防衛戦の指揮官は戦意が低いくらいでちょうど良いんです。まあ低すぎても困りますが有り余っているのよりは良い。ミューゼル大将には向いているとは言えません」
なるほど、そういう意味か……。言われてみれば思い当たるフシは有る。となるとあの件は如何なのだろう。この際だ、訊いてしまうか。
「公、或いはイゼルローン要塞をミューゼル大将に預けること自体が危険だと公は考えていませんか?」
かつて公を敵視していた貴族達も公を野心家とは評さなかった。しかし宮中ではミューゼル大将の目を危険な野心家の目と評し危うんでいる人間も居る。いつか反逆するのではないかとみている人間も居るのだ。公はその辺りをどう考えているのか……。
ブラウンシュバイク公はじっと私を見詰めた。部屋の中の空気が強張る。シュトライト少将も顔を強張らせた。拙い質問をしたか……、しかし一度は訊かなければならない事だろう。それによってミューゼル大将への対応も考える必要が有る。
クスッと公が笑い声を上げた。それと共に部屋の空気が緩みシュトライト少将もホッとしたような表情を浮かべた。
「メックリンガー中将の心配は分かりますがミューゼル大将はグリューネワルト伯爵夫人の身を危険に曝す様な事はしないでしょう。安心して良いと思いますよ」
なるほど、伯爵夫人か。となると公がベーネミュンデ侯爵夫人の一件でグリューネワルト伯爵夫人を守る立場に立ったのもそれが理由の一因として有るのかもしれない。ある意味、伯爵夫人は人質か……。
「それにミューゼル大将がイゼルローン要塞に籠って反逆するならそれほど恐れる必要は有りません」
「と言いますと」
不思議な事を言う。要塞は難攻不落、帝国にとっては一大事のはずだが。
「イゼルローン要塞は動きません。そして要塞には艦隊の支援が必要です。つまり反逆した人間は要塞付近から動けない、反乱の規模はイゼルローン回廊内に限定されることになります」
「……」
なるほど、反乱は拡大しない、規模は小さいというわけか。帝国の大勢に影響はしないというわけだな。そういう見方が有るか……。
「しかしイゼルローン要塞は難攻不落です。反乱は長期にわたる可能性が有るでしょう。となれば極めて厄介だと思うのですが……」
シュトライト少将が問いかけた。困惑した表情をしている。イゼルローン要塞を過小評価しているのではないか
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