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戦国異伝供書
第六十五話 伊賀者その八

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「当家の益になったかと」
「そうでおじゃるな」
「このことは当家の大きな利となります」
「竹千代の手柄でおじゃるな」
「そうなりまする、竹千代よくやってくれた」
 接し合は今度は竹千代に顔を向けて微笑んで話した。
「このことはな」
「そう言って下さいますか」
「うむ、ではこれからはな」
「半蔵を用いて」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「働いてもらうぞ」
「それでは」
「そしてな」
 雪斎はさらに話した。
「拙僧の後はな」
「今川家の執権としてですか」
「忍の者達も使ってな」
 そうしてというのだ。
「働いてもらうぞ」
「和上の僧の様にですな」
「その忍の者達を使うのじゃ」
「それでは」
「まさか忍の者達まで迎え入れるとはな」
 ここで雪斎はその笑みをさらに優しくさせて話した。
「拙僧の思った以上じゃ」
「左様ですか」
「そなたは天下の宰相の器やもな」
「天下のですか」
「そうも思った」
 実際にというのだ。
「そこまでな」
「それでは」
「さて、それでお主に前に話したが」
 ここで雪斎は話を変えた、その話は何かというと。
「元服と婚姻じゃ」
「その二つのことですか」
「関口殿にお話をした」
 既にというのだ。
「だからな」
「それでは」
「関口殿もな」
 その彼もというのだ。
「笑顔で頷いてくれた」
「それでは」
「そなたは近いうちにな」
「関口殿のご息女を」
「妻に迎えることになる」
「そうなりますか」
「そしてな」
「元服もですな」
「してもらう」
「それでそなたの諱でおじゃるが」
 また義元が言ってきた。
「麿が授けるでおじゃる」
「殿がですか」
「そうでおじゃる、お主ならば」
 将来今川家の執権になる者はというのだ。
「麿もでおじゃる」
「そうして頂けますか」
「それでよいでおじゃるな」
「勿体ないことです」 
 竹千代は恐縮して義元に答えた。
「まさに」
「そこまで言うでおじゃるか」
「殿に諱をとは」
「だからそれは当然でおじゃる」
 義元はまた竹千代に言った。
「お主程の者ならば」
「左様でありますか」
「妻を迎え元服し」
「諱もですか」
「そうなるでおじゃる」
「どうも。それがしは」
 雪斎そして義元にこれまでの言葉を受けてだった、竹千代は万感の思いを以てそのうえで言うのだった。
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