前章2 崩壊は肉体まで
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「えー‥‥‥それではこれより校外学習を始めます。各班は十分に気をつけて行くように」
先生の合図で俺たちはそれぞれの目的地へ向けて出発する。俺たちの目的地は風鈴を作る場所らしい。
「どんなところだろーね。全然想像つかないわ」
「あ、小林」
‥‥俺は、どういう巡り会わせか小林と一緒に回ることになったのだ。他の班員だってもちろんいる。ただ‥‥‥‥妙に小林に親近感を持てるのだ。女子のことが怖くて仕方がないのだが、小林だけは大丈夫なのである。
(なんでなのかな)
「ん?どうしたの?」
物思いにふける俺を不思議そうに覗き込む小林。少しドキリとする。
「‥‥‥いやあ、別に」
適当にはぐらかす。小林は特に気にもせずに別の話題を振ってきた。
「そうだ。緋鷹ってゲームするの?」
「ゲーム?そうだな‥‥星の○ービ○かな」
「あ!それ私もやってる!そんなに上手じゃないけどね‥‥‥」
「ほへぇ。初めて見たわ。カ○○ィやってる人」
「人気ゲームだけどねー。確かに見ないかも」
こんな具合に雑談しながら先へ進む。他の班員は完全に蚊帳の外なのだが‥‥‥。
「まもなく、一番線に‥‥電車が参ります‥‥」
ここからは電車で移動だ。
「あ、それじゃあ寝るから後で起こしてねー」
「は?おい、いきなり‥‥‥ってもう寝てるし」
小林はあっという間に寝てしまった。寝付きのいいもんだ。
「やれやれ‥‥‥幸せそうに眠りやがった‥‥‥‥ん?」
俺は小林の寝顔をまじまじと見つめる。どこか、似ている。幸せそうに、すべてに満足しているかのように眠る、そんな顔して眠る人を俺は一人だけ知っている。
「まさか‥‥‥聖?」
そう、小林の寝顔は聖にそっくりだったのだ。思い返してみれば、俺は小林に妙な親近感を抱いていた。話をしていると安心するし、なんだか懐かしい気分にもなったのである。
(まさか‥‥‥そういうことなのか‥‥?)
俺はこれまでの小林のことを考える。性格は聖とは違うし、なにより少しだけ男の子っぽいところが小林にはある。体型も聖はモデルみたいなのに対して小林はどちらかと言うとスポーティーだ。だが、近くにいると安心できるオーラを放っている。目は瞳の奥まで暖かい。なにより、親切で優しい‥‥‥。
(参ったな‥‥‥まさかこんなことが‥‥‥‥)
俺は一人苦笑をしてしまう。最近ようやく薄れてきた寂しさというものが、再び蘇ってきた。脳裏に浮かぶのは、最悪の光景。最愛だった人の命の灯火が、消えた光景。俺は苦笑しながらも、目的の駅に着くまでの間小林の寝顔を見つめるのだった‥‥‥‥。
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