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雲に隠れた月は朧げに聖なる光を放つ
前章2 崩壊は肉体まで
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が巻き起こる。が、それを気にしている余裕はない。

「ウグッ‥‥鉄の味がする」

そう、血が舌まで逆流してきたのだ。自然と呼吸も荒くなる。明らかに不味い状況。しかし、ここで止めたくはない‥‥‥。


俺は続行を決意する。無理矢理水分を摂取する。次で最後の種目だ。しかも一番得意な種目、床運動である。暫定トップ。ここで止めたら後悔する気がした。


だからこそ、自分の身を捨てて最後までやりきることにした。それに、死んだら聖に会える‥‥‥そうとも考えたのだ。あまりに悲壮な決意。しかし、聖に会えるかもしれないと考えた俺は、そんなこと気にもかけなかった。



床運動の直前練習が始まる。俺は跳ぶ。跳び続ける。悔いを残さないためにも。


あっと言う間に直前練習が終了した。俺の順番は一番最後だ。床運動は一つの演技時間が長いため、正真正銘最後の演技者というわけだ。


一人一人、最高の演技を実施していく。俺はそれをボーッと眺めていた。視界はより一層酷くボヤける。呼吸はかなり苦しい。多分顔色も悪いはずだ。それでも、俺は‥‥‥‥。



‥‥俺以外の人の演技が全て終了した。後は俺しかいない。俺はフロアパネルの上に立つ。次の瞬間。



轟!という音を聞いた気がした。室内なのに風が吹いた感覚がある。俺は、この感覚をよくよく知っている。体温はスッと冷めていく。視界が突然、しっかりとする。胸の痛みも消えた。


‥‥‥まさかのタイミングだ。このタイミングで、暴走に近い症状が出るとは思っても見なかった。なぜ完全な暴走じゃないのか?それは、理性が保てているからだ。完全に暴走すれば当然、理性は失うし殺意衝動も湧く。しかし、それが一切ない‥‥‥‥。

ある意味で成功した暴走、なのかもしれない。これなら、行ける‥‥‥。

審判がスタートの合図を出す。俺は、おそらく最後になるであろう返事をした。

「はい‥‥‥‥お願いします!」

クリアになった視界でフロアパネルを今一度睨む。そして、助走を始めた。最初はコンビネーション技だ。ロンダートから思いっきり飛び上がる。基本的には抱え込まない。というか今回の構成そのもので抱え込みの技がない。これから説明する技は、全て膝が伸びてると思ってもらって構わない。


‥‥‥最初のコンビネーションは、後方の一回宙返り二回半ひねりから前方宙返り二回ひねりだ。細かい説明は、悪いが省略させてもらう。

ダンッ!!ブチッブチッブチッ‥‥‥


上手く着地が出来た。しかし演技はまだまだ終わりではない。再び助走をつける。今度はロンダートを使わない、前方系の技だけでコンビネーションを組む。

ダァン‥‥‥ダァン‥‥! ダダン!!ブチッブチッ


俺は前方の一回宙返
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