前章2 崩壊は肉体まで
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上手く掴み取る。バーを飛び越えながら後方二回宙返り一回ひねり、その後再びバーを掴む大技、「コールマン」だ。オリンピックといった世界大会でもよく見る。
‥‥‥まあこのまま終わるわけではないが。コールマンを実施したことで加速が更につく。俺は間髪入れずにもう一度手を離した。
再びバーを飛び越える。今度はひねりを加えずに、自然な流れで二回宙返りをする。高さが頂点に達した時点で俺は膝を伸ばし、バーをロックオンした。
ガシャンッ!!
再び掴むことに成功する。‥‥バーを飛び越えて二回宙返り、そしてバーを再び掴む。これもそれなりに有名な技、「コバチ」だ。間髪を挟まない連続の離技に、会場がどよめく。が、今はそんなことを気にしている場合ではない。
(ぐ‥‥‥さらに痛くなってきた)
そう、離技でバーを掴むごとに、胸の痛みが激しくなってきたのだ。ここまで消耗しているのも手伝って、最初の方とは比べ物にならないぐらい痛い。今にも意識が飛びそう‥‥‥というか何回か吹っ飛んだ。だが、今このタイミングで辞めるわけにもいかない。俺は我慢に我慢を重ねて演技を続行した。少しの間、無意識に任せて体を自然に動かす。体は何をやるか覚えているので、無意識でも勝手に動いてくれるのである。片手で車輪をし、反転。逆の車輪に移行する。さらに小技を連続で組み立てて得点を稼いでいく。
最後の小技を決め、片逆手にする。体をムチのようにしならせ、勢いを最大限つける。ここから最後の離技に行くのだ。体がバーと水平なった時点でバーを下に投げるがの如く突き放す。膝は伸ばしたままだ。三度目の空中浮遊をする。
高さが頂点に達する。綺麗な放物線を描きながら俺は体の向きを180゜反転する。
(バーが‥‥‥見えた!)
俺は腕を伸ばす。
ガシャンッ!!
ブチッ
「?!!」
自分の体の中から嫌な音がした。何かが切れたような音だ。大切な、何かが‥‥‥。
だがしかし。今は演技中だ。あとはフィニッシュの下り技だけなので、気を引き締める。
俺は今日何回目か忘れた加速を行う。
シャン‥‥‥‥シャン‥‥‥シャン‥‥シャン‥シャ
風が轟々と耳元で唸る。
ブチッブチッブチッ‥‥‥
嫌な音も響く‥‥‥。
バチン!!
手を離した。つま先まで一本の棒になり、縦の回転が勝手にかかる。俺は縦の回転を自然に任せ、横ひねりに集中する。
一回‥‥‥‥二回‥‥‥‥
‥‥‥後方の伸び形二回宙返り二回ひねり。伸身の新月面宙返りだ。
(地面潜望‥‥距離20‥‥‥‥‥今!)
俺は着地姿勢をとる。
ドス!
足は‥‥‥動かない。体もぶれない。完璧な着地が成功したみたいだ。
ワァァァァァァァァァァァァア!!
歓声
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