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雲に隠れた月は朧げに聖なる光を放つ
前章2 崩壊は肉体まで
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夫なんかな?)

思わず心の中で毒づいてしまう。これに千秋がいたら修羅場の完成だ。

‥‥‥まあ最近、ゆっくりと話せていないのだが。クラスが別で、なんとなく気まずいというのが続いているのである。他のクラスメイトからはもう別れた認識をされているらしい。しきりに「もう別れたんだろ?」という言葉を投げかけられるのだ。こちらとしては、別れたつもりは毛頭ない。千秋の友達曰く、千秋自身も別れたつもりはないらしい。林に相談すると、

「倦怠期じゃね?w」

とまあ、なんとも軽い感じで返ってきた。蜂起に相談しても同じ答えが返ってきたので、倦怠期なのかな‥‥‥と勝手に思うことにした。別に飽きたみたいな感情はないが‥‥‥。

「ん?どうしたの?」

一人物思いに耽っていると、若芽に顔を覗き込まれた。どんな女子でも、顔を覗き込まれたらドキリとする。が、生憎俺には彼女がいる。ドキリとした感覚はすぐに収まった。

「いや‥‥‥別になんでもない。散歩、続けようか」

「‥‥‥ダメ、ちゃんと話してよ」

ジリリ、と迫られる。わりとマジな目をしている。

「え?あ‥‥‥うん」

流石に真剣な目で見られると言葉を選ばざるを得ない。俺はとりあえず逃走を始めた。

「悪い!話せねえや!」

「あ!こら、待ってよ!!」

その後、俺と若芽による鬼ごっこが始まったのは言うまでもない。俺たちは、お互いの体力が切れるまで延々と走り続けたのだった。


‥‥その後ホテルに戻ったら口笛を吹かれたが、撲滅したので問題ない。‥‥ないはずだ。



翌日


今日は全国大会本番だ。否が応でも気合が入る。大会に出場するのは俺と若芽だけだ。他のメンバーは応援でわざわざ来てくれた。直前練習の始まる二時間前までは暇だ。俺と若芽は午後スタートなので、暇つぶしに周辺散策をする。

「やれやれ‥‥全国だと雰囲気が違うな」

「そうだね。でも余裕でしょ?」

「まあ、緊張は無いかな‥‥‥人を守りながらの殴り合いの方が緊張する」

「あはは‥‥‥そこは人と違うね」

若芽に苦笑される。俺も自覚はある。常日頃、殴り合いをしていると感覚が可笑しくなってくるものだ。あくまで誰かの為に拳を振るっていたとしても、だ。やはり、その辺りの感情が欠落してしまったのは小六だ。躊躇なく生身の人を殴って、半殺しにして、銃口を向けて‥‥‥。

本来の感覚や感情は、殺されてしまったのかもしれない。

「‥‥‥?どうしたの?そんなに遠くを見つめて‥‥」

「‥‥‥‥いや」

「むー‥‥‥そうやってすぐにはぐらかす‥‥」

「話したくないことは男子でもあるんだよ」

「それは、誰かに引かれるのが怖いから?」

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ああ」
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