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雲に隠れた月は朧げに聖なる光を放つ
前章 復讐鬼
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「やめろおおおお!」

僕は無理矢理拘束を解く。が、時既に遅し。聖が車道に押し出された。僕は助けようと車道に駆け出そうとする。しかし上林に左腕を捕まれ、無理矢理引きずり戻される。その拍子に肘の骨が外れた。

トラックは聖に気が付かない。一層速度を上げて聖に迫る。聖は動かない。いや、動けないのだろう。見れば咳き込んでいるので、おそらく首を締められてから押し出されたのだ。

「聖ぃぃぃぃぃい!」

僕は絶叫する。が、その声に反してトラックは聖に突っ込む。

トラックが突っ込む直前、聖はこちらを見た。その顔は清々しい。僕の目を真っ直ぐ見て、微笑んだ。思わず見惚れてしまいそうな笑み。その笑みには、全ての思いを見事に表現していた。「ありがとう」「大好き」「さようなら」

「聖‥‥‥」

その呟きと共に


僕の最愛の人は



トラックに飲み込まれた‥‥‥‥‥。


「ギャハハハハハ!見ろよこいつの顔!」

「受けるわー!」

「最高!」

汚い笑い声を挙げて通学に戻るイジメっ子たち。追いかけようとするも、ズキッと左腕が痛む。

「そうだ‥‥‥脱臼したんだった」

茫然としていると、トラックの運転手が降りてきた。目の前の惨状を見て、顔が青褪める。さらに、僕のダランとした腕を見て事件に巻き込まれたと判断したらしい。警察と救急に連絡をしてくれた。

「坊主、大丈夫か?」

「‥‥‥肘を外された感じ」

「そうか‥‥‥坊主、すまないな。お嬢ちゃんを轢き殺してしまって‥‥‥‥。謝っても許されないと思うが、頭を下げさせてくれ」

そう言って土下座するおじさん。

「おじさん‥‥顔を上げてください。あれはおじさんのせいじゃないです。今でも聞こえてくる、あいつらの仕業です」

「あいつら‥‥‥?ああ、今も笑い声が聞こえるな‥‥‥誰だかは分からないが」

「あ、パトカーと救急車‥‥‥‥」

サイレンを鳴らしてパトカーと救急車二台がやってきた。警察の人がおじさんを連れて行き、僕は救急車に乗せられる。聖も乗せられているが、おそらく即死、それか瀕死だ。それがなんとなく僕は分かっていた。

「さて、ボク。腕は痛むかい?」

「はい‥‥‥外れた感じです」

その言葉に頷き、「痛いと思うが我慢してくれよ?」と一言。そして外れた腕を再び元の位置にハメてくれた。

「包帯を巻いてっと‥‥‥よし、応急処置はこんなもんだ。これから病院に連れて行くから、名前と住所、電話番号を教えてくれるかな?」

その質問に僕は淡々と答えていく。救急隊員の人は誰かに電話をかけ始めた。おそらくお母さんだ。

そんなことはどうでも良かった。僕は聖のことを考えていた。彼女はおそらく、いや、もう帰ってこない
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