前章 復讐鬼
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‥‥‥‥‥‥‥‥」
「コウは、こんなに優しくていい人で、嫌なところなんて一つもないのに‥‥‥」
「それは言い過ぎだろ‥‥‥‥」
「そんなことない!」
聖が声を大きくする。
「コウだって、顔が整ってるし運動もできて性格も良いのに‥‥‥それこそ僕じゃ勿体無いよ‥‥‥」
「あはは‥‥‥」
乾いた笑い声が出てしまう。もう長いこと心から笑えていないのだ。今日、暴力は少なかったとはいえど様々な物を盗まれたのだ。無傷で帰ってくることはまず有り得ない。
「まあ、なんとか乗り切るからさ。僕は聖がいればなんでも乗り切れるよ」
「それでも‥‥‥」
「大丈夫。きっとなんとかなるさ」
不安そうな聖を見て安心させるために言葉をかける。
「今日のことを考えるんじゃなくて、明日のことを考えよう。それなら気持ちは楽だよ」
「で、でもコウの身体は‥‥‥」
「まあ骨折でもしなければいいよ。体操はできるから」
「そんなのダメだよ‥‥‥そのうちコウが殺されちゃうよ‥‥」
「考え過ぎだって。絶対に死なないから」
その後も不安がる聖に言葉をかけにかけまくる。そんなやり取りをしていたら夜になってしまったので僕は自分の家に戻ることにした。
「それじゃ、また明日」
「うん‥‥‥また明日ね!」
僕たちは最後に互いを見て微笑む。そして僕は階段へ、聖は部屋へと戻っていった。
階段の影で、一部始終を見ていた男の子の人影を誰も知ることはなかった‥‥‥‥。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次の日。僕たちはいつものように登校していた。空は清々しいぐらいに秋晴れだ。日にちは‥‥10月2日である。
「さて、今日はどんな目に合うことやら」
「なにかされる前提って悲しい‥‥‥」
雑談をしながら登校する。途中で横断歩道があるので僕たちは止まる。ここの横断歩道は結構待つので雑談に花が咲く。
と、そこへ人影が現れた。言わずと知れた上林たちである。見れば中内たち女子もいる。朝から何事だと思い、僕は臨戦態勢を取る。
「よお二人とも、朝から奇遇だなあ。‥‥‥やれ」
その掛け声で僕は男子四人に取り押さえられる。突然の出来事に戸惑う。見れば聖も男子と女子に動きを封じられている。
上林が下卑た笑みを浮かべる。
「緋鷹、随分と雲月のことが大切なんだなあ。朝から手なんか繋いでさー。‥‥‥‥こいつが死んだらどんな顔をするのかな?」
「?!!まさか‥‥‥‥おい、やめろ!」
「黙れ!」
理不尽に殴られる。車道側の信号が一度赤になり、再度青になる。車が走り出す。少し感覚が空き、遠くからトラックが疾駆してくる。
「殺れ」
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