暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
無印編
第2話:希望との別れ、魔法との出会い
[4/7]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
態に奏は仮面の人物の事も忘れて彼に声をかける。

 その様子を…………正確には奏の腕の中の颯人を見て、仮面の人物は静かに呟いた。

「凄いものだな…………血は、争えんか」
「え? な、何言ってんだあんた? それより、早く颯人を病院に────」

 全てを奏が言い切る前に、仮面の人物──声からして男──は颯人を彼女から奪い取るように抱き上げると遺跡の外へ向かって歩き始める。

 それを見て慌てて奏が後を追いかけようとするのだが、出し抜けに体に鎖が巻き付き彼女の動きを拘束した。

〈チェイン、ナーウ〉
「えっ!? な、何だよこれ? おい、颯人をどこに連れて行く気だよッ!?」
「すまんな、それは言えない」
「ふざけるなッ!? 返せッ!? 颯人を返せよッ!?」
「君に助ける事が出来るのか?」
「関係あるかッ!? 颯人は……そいつは、あたしの──」
「助けは呼んでおいてやる。ではな」
〈テレポート、ナーウ〉

 奏の言葉を無視して、仮面の男は再び右手の指輪を付け替えると颯人を抱えたまま腰の掌型のバックルに翳した。するとまたも音声が響き、仮面の男を上下から白く輝く魔法陣が挟み込む。

 魔法陣に挟まれた男と颯人は魔法陣と同じ白に輝き、その場から忽然と消えてしまった。

 と同時に、奏の体を拘束していた鎖も消え去り、後には奏1人が取り残される。

「あ…………あぁ……」

 奏は誰も居なくなったそこに向けて、力なく手を伸ばす。

 伸ばした手を握るが、その手が握るものは何もない。空虚な空間を掴むだけだ。

 皆……皆居なくなった。父も母も、妹も。

 そして…………自身にとっても希望であった少年、颯人ですら誰とも知れぬ者によって連れ去られてしまった。

「あぁ……あぁぁ…………」

 何も出来なかった。守られるだけ守られて、全てを奪われた。その事実が、奏の心に白紙の上に垂らした黒い絵の具の様に広がり、無力感と絶望が奏の心を黒く塗り潰していく。

「う…………うわぁぁぁぁぁぁっ!? ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 絶望の叫びを上げ、地面を何度も殴りつける。両目からは涙が止めどなく流れ、素手で地面を殴ったことで手の皮が破れ血が流れても、地面を殴ることを止めなかった。

 自身の無力さを、自身への怒りをぶつける様に。

 奏の叫びは、遺跡の外で日が沈んだ後も続いた。

 その叫びを…………涙を、己への暴力を止める事が出来る者は、今は居ない。




 ***




 謎の人物によって連れ去られた颯人。彼が目を覚ましたのは皆神山での惨劇から数日後のことであった。

「ん……んん? ここ、は──?」

 颯人が目を覚ました時、彼はどことも知れぬ場所に置か
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ