Mission
Mission1 カッサンドラ
(2) スカリボルグ号機関部~同後部客室車両
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先頭車両に着いた時、すでにそこは呻き声と銃声が交錯していた。
この先にいる人物をユティは知っている。それでも逸る心を抑え、ジュードとルドガーの後ろに続いた。
先頭車両のガラスドームスペース。テロリストの死体に囲まれて立つのは、ユリウス・ウィル・クルスニクだった。
「ルドガー、何故……」
ユティの記憶よりずっと若い姿、張りのある声。
声が出そうになって、ぐっと堪える。
「兄さんこそ、どうして!?」
「……仕事だよ」
そう言われては詰問できないのか、ルドガーはユリウスから視線を外す。状況と兄への信頼とに揺れる翠色が痛々しい。
そこに場違いな拍手が乱入してきた。
「私はいい部下を持った。さすがクラウンエージェント・ユリウス。仕事が早い」
「戯れはやめてください、社長」
ビズリー、ヴェル。それにエルと猫も。
「しかしこんな優秀な弟がいたとは。大事に守ってきたんだな。優しい兄さんだ」
ユリウスの蒼眸に烈火が宿った。ユティは目を奪われる。彼のこんなに峻烈な闘気をユティは知らない。
「――当然だろう!」
ユリウスが渾身の力で揮った双剣を、しかしビズリーは紙一重で難なく躱していく。
ユリウスもやがて不利を悟ったか、バックステップで距離を離し、ポケットから二つの懐中時計を取り出した。真鍮と、銀。
「その時計……っ、あれ?」
エルが踏み出した瞬間、エルの胸に輝く真鍮の時計が戻る。
(『鍵』が触れたものなら正史に持ち込める。でも同時には存在できないから、融合!?)
ユティは壁際に退避するとカメラを構えた。
ユリウスの手から弾かれた真鍮の時計が宙に舞い、エルの時計と重なり、一つになる。
レンズ設定を手動に。ユティはシャッターを連続で切り、その瞬間を納めきった。
その直後にルドガーがエルの手を引いて逃げようとする。シャッターはまだ続いている。
真鍮の時計の光が、エルを通してルドガーに波及した瞬間も、ルドガーが山吹色の骸殻をまとう姿も、撮れていた。
ルドガーたちが消えた。正確に述べると、ルドガー、エル、ジュード、猫が先頭車両から姿を消した。
(分史世界に飛んだ。エル・メル・マータを通した契約とは聞いてたけど、こんなふうにだったのか。百聞は一見に如かず)
どっと疲れた。この場にルドガーがいない以上、これでユティにできることはなくなってしまった。
(いいえ。全くないわけじゃあないわよね)
残るメンバーを見る。ユリウス、ビズリー、ヴェル。ヴェルはビズリーが連れて脱出するだろう。上司として雇用主としてあの男には当然な流れ。となれば。
ユティはユリウスに駆け寄り、手首を
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