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レンズ越しのセイレーン
Mission
Mission1 カッサンドラ
(1) トリグラフ中央駅~特別列車スカリボルグ号
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地し、ショートスピアを抜く。肉がよじれる音がして、血まみれの槍身が現れた。

「どうやってあんな場所に立ったんだか」
「ワタシ、ただでさえちっこいし非力だから、勝とうと思ったら奇襲しかないのよね。コレはソレを極めた結果」
「なるほど」

 しかし歓談の間にも次のアルクノア兵が現れる。いざ、と交戦に入ろうとした時――アルクノア兵が倒れた。

「あれ?」

 アルクノア兵を倒したのは、ルドガーが駅に案内した白衣の少年だった。

「お見事、Dr.マティス。今のがリーゼ・マクシアの武術ですか。警備の者にも習わせたいものだ」

 拍手しながら歩いてくるのは、何と「あの」ビズリー・カルシ・バクーと、秘書のヴェル・ルゥ・レイシィだった。

「同じ車両に乗り合わせててよかったです」

 次いでビズリーの目はルドガーに留まった。

「そちらもなかなかの腕をお持ちのようだ。私はクランスピア社代表、ビズリー・カルシ・バクー」

 ビズリーが大きな掌を差し出す。握手を求められている。あの巨大企業クランスピア社の社長に、兄が勤める会社のトップに!
 内心の歓声を抑えて、ルドガーは名乗りながら握手に応じた。

「ユリウスの身内か」
「本社のデータにありました。ルドガー様はユリウス室長の弟です。――母親は違うようですが」

 そこでフラッシュ音。ルドガーは内心の恨みを今度は包み隠さず後ろをふり返る。

「おーまーえーなー」
「そんな大物と握手できるチャンスなんてそうそうないですよ、無職のルドガー君。一生の宝物になる確率大デスヨ。生活困ったらお金にもなるしね」
「ぐっ」

 こいつ面白がってやがる!

「はははっ。面白いお嬢さんだ。友人かね」
「いいえ! たまたま乗り合わせただけの赤の他人です」

 ビズリーはユティにも握手を求めた。

「ユースティアです。ユースティア・レイシィ」

 ユティはビズリーと握手を交わした。あの小さな掌は、ビズリーの大きな手にすっぽり収まっている。ルドガーはここで初めてユティのフルネームを知った。

「奇遇だな。私の秘書もレイシィ姓だ。ルドガー君といい君といい、不思議と縁があるな」
 
(双子なのにミドルネーム違うんだなってノヴァに言って、俺と兄さんみたいに兄弟でミドルネームまで同じほうが珍しいって言われたっけ。ユティはノヴァやヴェルの親戚なのか?)

 当のユティは何故かじっとヴェルを見つめ、ふいと逸らした。どこか痛そうな顔だった。

「ルドガー、とりあえず、列車止めよう。このままだとみんな死ぬ。乗ってる人も、アスコルドの人も」
「そんなの困る!」
「そう。困るの」
「僕も行きます。――責任があるんです」

 名乗り出たのは白衣の少年。琥珀色の目は
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