Mission
Mission1 カッサンドラ
(1) トリグラフ中央駅~特別列車スカリボルグ号
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真鍮の懐中時計の上から落ちた。これが盾になって彼女を守ったのだろう。
そっと時計に触れる――次の瞬間、時計は淡く光って消失した。
「え、はぁ!?」
あたふたする。これはルドガーの責任になるのか。すると、ルドガーの声に反応した少女が目を開けた。
「パ、パ…」
少女が翠の目をこすりながら起き上がる。外傷はないようだ。ほっと胸を撫で下ろす。
「あっ…」
「!」
少女の視線の先にはアルクノア。ルドガーはとっさに少女を押し倒して床に伏せた。
炸裂する銃声。
見逃してくれるか、否、相手は乗客を皆殺しにするテロリストだ。自ら道を切り開かねば死ぬのはこちら。
覚悟を決めたルドガーは徒手空拳で座席の陰から飛び出そうとした。
「動かないでね」
―― 一羽の蝶がいくさ場に舞い込んだ。
蝶はショートスピアを構えてアルクノア兵をいなす。座席を軽業のように翔ぶ蝶はマシンガンでさえ捉えきれない。
やがて蝶はアルクノア兵の肩に降り立ち、2回3回とステップして飛び降り、背後から体勢を崩したアルクノア兵を一突きにした。
(何てトリッキーな戦い方だ。俺の知ってる剣術と全然違う)
ルドガーがユリウスから受けたのはあくまで双剣を使った模範的な剣術だ。だが彼女の技は異なる。武器さえも体の一部のように使って敵を倒した。
こつこつ。ブーツが鳴る音が近づいてくる。自分たちに用があるのか。それとも過ぎ去るのか。
答えは前者だった。しかもかなり剣呑な用だった。
「今すぐ列車から、その子と一緒に降りてください。でないとあなたは近い将来死ぬしかなくなります」
ルドガーは少女を抱えたまま、慎重に彼女をふり仰いだ。
枯葉色のワイシャツに、赤いネクタイ、長めの水色カーディガン、短パン。恰好自体はテロリストには全く見えない。私服の女子学生といっても通じる。……手に持ったショートスピアを、ルドガーに向けていなければ。
命の危機だというのに、ルドガーは別のことに呆気に取られていた。
(兄さん、に、そっくりだ)
メガネ着用、髪の色はもちろん。少女は、かつてユリウスが剣の手ほどきをしてくれた時と同じ空気をまとっていた。
「もう一度言いますよ。今すぐ列車から降りて。その子と一緒に。でないとアナタ、死ぬわよ」
やけに確信的な言い方に、さすがのルドガーも先のデジャビュは忘れて言い返す。
「それはあんたもじゃないか。あんた、アルクノアじゃないんだろう。武器は持ってるみたいだけど、一人でテロリスト全員相手にするなんて無理がある。俺の身を心配してくれるのはありがたいが、あんたも自分の安全を考えたらどうだ」
少女は目を白黒させた。
「乗ってたら死ぬっ
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