第3話 遭遇と怒りと首チョンパと
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胸に渦巻くのは明確な怒り。
彼女を人ならざる存在に変え、大切なものを奪った元凶に。
教え植えつけられた知識と感情だけで彼女を人ならざる者と罵り、恐れ、害そうとする目の前の男達、否、下衆共に。
そして何より、力を得ながら目の前の彼女すら救えていない私自身に。
不老不死の呪いはもとより、この1週間の苦しみと言う意味で。
私が彼女を救いたいと思っていたのは神様も知っているだろう。
それでなお1週間後という時期だったのは、それが介入の限界だったからだと予想できる。
つまりは、今の時点の私ではどうにもできないことと言える。
そもそも全人類を助けられる訳では無いし、助けようとも思わない。
候補とはいえ魔王にも出来ることと出来ないことがある。
それでも目の前の少女を一時でも苦しめ、救う事が出来なかったのが腹立たしい。
たとえ原作知識と言う色眼鏡の部分があったとしてもだ。
「なんだ貴様は!我々の邪魔をするのか!」
そんなことを考えていると、目の前のローブを着た下衆が返事を返してきた。
最初はマント、外套を羽織る私を唯の旅人とでも思ったのだろう。
しかし黒と言う色にいぶかしみ、若干の警戒をしながら声をかけてくる。
「言ったでしょ、あなた達が彼女になにをしているかを聞いているの」
「この娘はこう見えて吸血鬼なのだ。それも上位種の真祖だ!故に我々が討伐する!」
「なぜ?」
「吸血鬼は悪だ!悪は滅ぼさなければならない!だから正義たる我らが討伐するのだ!」
想像通りの、なんともお粗末な話しだ。
しかしそのお粗末な話しを並べる下衆も、周りの下衆共も、皆正義と言う言葉に酔い、当然とばかりの表情。
・・・まだよ、シルヴィア。まだ抑えなさい。まだ引き出せる情報があるはず。
そう思いつつ、元々嫌いだった正義という言葉がより嫌いになるのを感じながら話を続ける。
「その子が吸血鬼?冗談でしょう?なにかそうだと言う証拠でもあるの?」
「・・・・・・」
その私の質問に、饒舌だった下衆の言葉が止まる。
とっさの反論がない、という事は1つの可能性が浮かび上がる。
この男の根拠としている事象が『魔法世界』の理屈によるもの、という可能性だ。
原作の知識と神様の話しが確かなら、彼女が吸血鬼の真祖にされたのは1週間ほど前、10歳の誕生日。
親は地方領主で、城で開かれた盛大な誕生会の最中に吸血鬼に襲われ、呪いに掛かり吸血鬼の真祖となったはずだ。しかも親を含め身内や参加者を虐殺されて。
もし下衆が『旧世界』側の人間なら、ただその事実を述べて、唯一不自然に生き残った娘の仕業
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