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プロイセン騎兵
第四章

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 確かに見栄えはよかった、だがバランスが下手をすると後ろに向かってそこから落馬しかねない、それで腰でバランスを取るのが大変だった。
 攻撃、サーベルや銃を出してそうしようにもやはりバランスが気になる。本当に下手をすれば落馬しそうだ。これで部下もわかった。
「こんな姿勢では」
「進むことも一苦労だな」
「普通に馬を歩かせることすら」
「それだ、その姿勢だからだ」
 イフシェンコフは部下に強い声で答えた。
「だからだ」
「プロイセン軍の動きは悪いのですね」
「そういうことだ、だからプロイセン軍は訓練も規律もいいが」
 戦術も悪くないがというのだ、流石にナポレオンには劣るが。
「他の国の騎兵に比べて戦いやすかったのだ」
「乗る時の姿勢ですね」
「そのせいで、ですね」
「彼等は弱かったのですね」
「姿勢自体に問題があったので」
「見栄えはいいが戦闘に問題がある」
 はっきりとだ、イフシェンコフは私的した。
「だからあの国の騎兵隊は弱い、これからもあの姿勢でいる限りはな」
「プロイセン騎兵とは戦いやすいですね」
「それがプロイセン軍の弱点ですね」
「それであり続けますね」
「そうだ、これからも狙っていくべきだ」
 敵の弱点ならばとだ、イフシェンコフは強い声で言った。
 そうして自分から酒を飲んだ、その美酒は非常に美味かった。敵の弱点を衝いて見事に勝ったことを喜びつつ飲んだ酒をまた楽しみたいとも思った。
 プロイセン騎兵のことは騎兵隊というものがなくなった今ではこれといって振り返られるものではない、だがこのこともまた戦史にある。幾ら訓練をし規律を徹底させ戦術を研究しても姿勢一つで強弱が大きく別れることもある、軍事とは実に難しい。軍隊は確かに見栄えも大事だがそれを第一にさせると肝心の強弱にも大きく左右する。人類の歴史ではそうしたこともあるということだ。


プロイセンの騎兵   完


                   2019・7・7
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