第22話 ついに俺もヒーローデビュー!
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を、こんなことでお釈迦にしたくはなかったんだろう。それに、「人命救助」のために用意された力で、強盗とは言え人間をボコることも出来れば避けたかったんだはずだ。
それを考えると、着鎧する立場を一般ピープルの俺に託したのは、この上ない采配だったのかも知れない。
俺の感性なら何の気無しに着鎧甲冑で戦えるし、「神出鬼没のスーパーヒロインかと思ったら、正体は地元の人間でしたー!」ということになれば、最悪噂が拡散しても「松霧町のご当地ヒーロー」という程度の話題で収まることも、まぁ有り得なくはない。
そういう諸々のメリットやデメリットを踏まえた上で、彼女は俺に托そうとしてた……のかもな。それに、確かゴロマルさんが言ってたっけ。
『――樋稟は息子夫婦の夢のために、正義の味方となってこの町を守っておるが……あの娘自身としては、本当はそんな王子様のような存在に救われる、『お姫様』になりたかったのじゃよ』
――お姫様に、王子様ねぇ。あの時はいろいろとてんてこ舞いで、考える暇なんてなかったから気づかなかったけど……かわいいとこ、あるじゃないか。
そんなヒロイックな活躍を彼女が期待しているのかは別として、俺は任されたことをこなす義務があるんだろう。多分。
こうなったからには、俺がやらなきゃダメなんだ。救芽井樋稟じゃなく、この一煉寺龍太が。
意を決して、俺は「腕輪型着鎧装置」を右手首に巻き付ける。その瞬間――
「なんなら今ここで、俺の味を教えてやろうかァ?」
オッサンの掌が、救芽井の豊満な胸に伸び――その膨らみをわしづかみにした。さらに、桜色の薄い唇を奪おうと、彼女の顔に迫っていく。
そして、俺の目に映ったのは――溢れるように零れ出て、頬を伝う彼女の「悲しみ」だった。
「――着鎧甲冑ッ!」
その時だろう。俺の何かがプッチンプリンしちゃったのは。
炎でも吐きそうなくらいに叫び出した俺の感情が、「救済の先駆者」のパワーを通してトイレのドアを吹き飛ばす。
その衝撃でドア以外の部分も破壊されたらしく、辺り一帯に土埃が舞う。
「な、なんだ!? ごッ……!」
突然の衝撃音に狼狽する強盗の一人を、腹いせで殴り倒し――そいつを引きずりながら、俺は土埃の外へと顔を出す。「俺じゃない顔」の俺を。
「な、な、なんだテメェェッ!」
例のオッサンは救芽井から手を離し、両手でピストルを向けながら叫び散らす。
――今すぐ殴り倒してやりたいのは山々だが、あんたには大切なことを教わった借りがある。それに免じて……「名乗り」ぐらいはサービスしてやろう。
王子様……いや、「ヒーロー」の醍醐味だしな?
「正義の味方、『着鎧甲冑ヒルフェマン』参上――ってなァ」
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