第百三十一話 追撃戦その七
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「敵の勢力は大きく削がれる、戦力を回復する間に」
「九州の北の諸国をですね」
「攻めて併呑し」
「そして九州での力を確固たるものにし」
「後は南だ」
九州のというのだ。
「そう駒を進めていく」
「そのお考え故に」
「今は二割か三割だ」
敵の軍勢のそれだけをというのだ。
「叩く」
「わかりました」
「後は逃がしてもいい、退路を完全に断つことは今は無理だし」
それにというのだ。
「例え絶ってもな」
「それなら九州の軍勢は」
「やはり死兵になる」
今話したそれにというのだ。
「敵は死兵にはな」
「すべきでない」
「あえて背水の陣を敷かせることは愚だ」
史記にある項羽、そして韓信が敷いたその陣をというのだ。二人共自軍をあえて死地に置いて敵と戦って勝ったのだ。
「それを敷かせずに勝つ」
「それも戦ですね」
「だからだ、二割か三割叩き」
英雄はまたこう言った。
「そしてだ」
「そのうえで」
「後は逃がしてもいい」
目標はそれだけだというのだ。
「そう考えて攻める」
「それでは」
紅葉は英雄の考えに頷いた、それでいいと肯定した。そうして彼女も攻めに加わり多くの兵を倒していった。
英雄達が率いる主力に追いつかれた九州の軍勢は本格的に攻められ多くの将兵を討ち取られた、だがそれでもだった。
彼等は必死に戦い後退を続けていた、その戦ぶりを見てだった。
智は自分達と合流した英雄のところに来てこう言った。
「ここに来て本格的にでござる」
「敵軍を攻めている」
「筑後に入ったでありますが」
「それでもな」
「攻め続けているでござる」
「いい流れだ、だが」
「深追いはでござるな」
「それはしない」
決してという言葉だった。
「それでは元も子もない」
「それでは」
「今は敵に損害を充分与えている」
「二割、それかでござるな」
「三割は倒した、ならだ」
それならと言うのだった。
「もうだ」
「目標は達したでござるか」
「敵の戦力はかなり奪った」
そうしたというのだ。
「目標だけな」
「だからでござるか」
「満足すべきだ、ここで深追いするとな」
欲、それを出してというのだ。
「しくじる」
「そうなるでござるか」
「戦は博打と違うが博打は欲を出せば」
即ち勝ちたい、儲けたいと思えばというのだ。
「負けるというしな」
「その時点で」
「そんな言葉を聞いたことがある」
元阪急の足立光宏投手がそうだったらしい、この人は競馬が趣味だったが勝とうと思っていておらすぞれが強かったとのことだ。
「欲を出すとな」
「負ける」
「そして戦もな」
「欲を出すと」
「勝っている戦もだ」
それもというのだ。
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