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戦国異伝供書
第六十五話 伊賀者その一

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               第六十五話  伊賀者
 竹千代は義元に自分の領地を見て来る様に言われて岡崎に入った、そこに入り城も領地も見回して共にいる酒井に話した。
「物心ついてはじめて岡崎に入ったが」
「如何でしょうか」
「よい場所じゃ、ここがわしの生まれたところでじゃが」
「はい、ご領地です」
 酒井は竹千代に答えた。
「この地が」
「そうじゃな」
「それでどうでしょうか」
 酒井は竹千代に畏まって尋ねた。
「この地は」
「落ち着いたよい地じゃ」
 竹千代は酒井に笑顔で答えた。
「城もな、ただ」
「ただと申しますと」
「城はより堅固にしたい」
 城についてはこう言うのだった。
「城下町も田畑もな」
「より、ですか」
「整えたい、堤も橋も整え」
 そちらもというのだ。
「そうして豊かにしたい」
「それでは」
「うむ、そしてな」
 ここでさらにだった、竹千代は話した。
「やはり城はな」
「堅固にですか」
「したい、堀はより深く広くして壁や石垣もな」
「より高くですか」
「そうしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「よき城にしてな」
「いざという時に」
「多くの兵も入れて」
 そうしてというのだ。
「戦える様なな」
「そうした城にされたいですか」
「銭があればじゃがよいか」
「出来るだけ銭を使い」
 そしてとだ、酒井は竹千代に答えた。
「そう致します」
「ではな」
「はい、では岡崎の政を」
「進めていこうぞ」
「さすれば」
「お主達にも存分に働いてもらい」
 そのうえでというのだ。
「豊かにしたい、豆も作るか」
「あぜ豆をですな」
「それも民達に植えさせてな」
 そうしてというのだ。
「そこから納豆や味噌もな」
「作り」
「そしてじゃ」
「それ等を売り」
「銭を作るか」
「そうされますか」
「ただ田畑を整え街をよくするだけではな」
 それだけでなくというのだ。
「まだ足りぬであろう」
「だからですか」
「そちらもじゃ」
 納豆や味噌もというのだ。
「作らせて売ってな」
「銭を手に入れられますか」
「吉法師殿もそうされている様であるしな」
 彼の名も出して話した。
「だからこそな」
「あの方の様にされて」
「そうしてな」
「岡崎を豊かにされますか」
「そのつもりじゃ」
 こう話した。

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