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戦国異伝供書
第六十四話 婚礼の話その十三

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「それでもです」
「麿は血は好まぬでおじゃる」
 無駄な殺生もだ、義元は雪斎の教えもありそれで戦でも無闇な殺生はせず無残なことは決してしないのだ。
 それでだ、今もこう言うのだ。
「だからでおじゃる」
「それでは」
「うつけ殿でも何かの役に立つでおじゃろう」
 やはり雪斎の言うことは信じられないがそれでもこう言った。
「だからでおじゃる」
「さすれば」
「織田家の者は出来るだけでおじゃる」
「召し抱え」
「吉法師殿もでおじゃる」
 雪斎の言葉を容れてというのだ。
「そうするでおじゃる」
「さすれば」
「ただ。斎藤殿は」
 義元は道三についても述べた。
「あの御仁は」
「どうもですか」
「下剋上を繰り返し今も油断出来ぬ御仁でおじゃる」
「織田殿はよくとも」
「斎藤殿は家臣にすれば」
 その時はというのだ。
「麿が寝首をかかれるでおじゃる」
「ご安心下さい、この前斎藤殿を占いましたら」
「どうしたでおじゃるか」
「どうも剣難、謀反に遭い」
「そうしてでおじゃるか」
「滅びられる様です」
 そう占いで出たというのだ。
「ですから」
「左様か、では」
「はい、斎藤殿はご安心下さい」
「わかったでおじゃる」
「では上洛に向けて」
「手を打っていくでおじゃる」
 こう言ってだった、義元は実際に手を打っていくことにした。その目は常に都の方に向いていた。だが。
 竹千代は都の話を聞いてもこう言うばかりだった。
「どうもそれがしには」
「感じるものはないか」
「はい、都のことは聞いていても」
 雪斎にもどうかという顔で答えた。
「上洛したこともありませぬし」
「では機会があればな」
「上洛してですか」
「知るとよい。だが古書にあるのとは違ってな」
「今は戦乱で」
「乱れておるから殿は上洛されれば」
 義元のその時の考えも話した。
「見事に治められる」
「その様にですか」
「お考えじゃ、だからな」
「その時はそれがしも」
「都を復興されることをな」
「それと共に」
「都のことを知るのじゃ」
 こう竹千代に言い竹千代も頷いた、彼にとって都のことはまだ夢のまた夢その先にあるものであった。


第六十四話   完


                  2019・9・1

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