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戦国異伝供書
第六十四話 婚礼の話その十一

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「ご注意を」
「麿はとても」
 このことだけはと言うのだった。
「思えないでおじゃるが」
「それでもです」
 雪斎はまだ言った。
「あの御仁は若しや天下も」
「それすらもでおじゃるか」
「手に入れるまでに」
「まさか」
「いえ、拙僧の見た目では」
「そうでおじゃるか」
「ですから」 
 雪斎の話は続いた。
「あの御仁とことを構えた時は」
「油断せずでおじゃるか」
「はい、先陣は竹千代と拙僧が」
 雪斎は自ら名乗り出た。
「そうします」
「和上はよく先陣も務めてくれるでおじゃるな」
「戦国の世です」
 それならばというのだ。
「僧であろうとも」
「戦うものでおじゃるか」
「戦はせぬに越したことはないですが」
 実は雪斎は戦は好まない、僧籍故に血を好まぬのは当然であるが元々の性格としてそうであるのだ。
 だが戦国の世でありとだ、雪斎はさらに話した。
「それに拙僧は今川家の臣です」
「ならばでおじゃるか」
「今川家が戦をするならば」
「和上もでおじゃるか」
「戦の場に出るのは当然のこと」
 まさにと言うのだった。
「だからこそです」
「先陣もでおじゃるか」
「務めまする」
「軍師も務め」
「左様であります」
「そうでおじゃるか」
「とかくです」
 雪斎は義元にあらためて話した。
「織田家の織田吉法師殿はです」
「類稀なる傑物で」
「相手にするならば」
「当家の最大の敵となるでおじゃるか」
「只でさえ終わりは六十万石です」
 国の力のことも話した。
「一万五千の兵です」
「こちらは百六十万石ありそうでも」
「今わかっているのは百万石です」
 駿河、遠江、三河の三国を合わせてだ。
「出せる兵は二万五千」
「一万五千対二万五千でおじゃるな」
「兵は確かに有利ですが」
「油断はでおじゃるか」
「出来ませぬので」
 それ故にというのだ。
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