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戦国異伝供書
第六十四話 婚礼の話その八

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「彦五郎様は剣術や馬術は出来ますするし」
「己の身体を動かすことはでおじゃるな」
「蹴鞠は妙技まで身に着けられようとしておられます」
 まだ元服前だがというのだ。
「そのことを見ますに」
「麿と違ってでおじゃるか」
「はい、身体を動かされることなら」
 それならというのだ。
「お見事です」
「一人の武士としてはでおじゃるな」
「文句はありませぬ、ですが」
「一軍を率いる将としては」
「兵法が不得手なので」
 それでというのだ。
「そこが問題となります」
「左様でおじゃるな」
「殿はです」
「麿は身体を動かすことが苦手でおじゃる」
 義元は自分から話した。
「どうにも、馬は特に」
「乗れていますが」
「それだけでおじゃる」
 自ら笑って述べた。
「早駆けも苦手でおじゃるからな」
「それでそう言われますか」
「そうでおじゃる」
「それは殿がご幼少の頃は寺におられ」
「馬術を学んでいなかったからでおじゃるか」
「そのせいでして」
 それでというのだ。
「仕方ないところもあります」
「そうでおじゃるか」
「彦五郎様は得手不得手がはっきりしておられて」
「それで、でおじゃるか」
「はい、先穂も申し上げましたが政は」
 こちらのことはというのだ。
「先が楽しみです」
「そこまででおじゃるか」
「そして剣術は特にで」
「馬術も水練もでおじゃるな」
「弓も出来る方です」
 武芸で剣術より大事とされるそちらもというのだ。
「見事に。ですが」
「兵法はでおじゃるか」
「どうも」
「ではでおじゃる」
 義元はここまで聞いて述べた。
「あ奴にはよき補佐の者をつけて」
「拙僧か、ですな」
「竹千代をでおじゃる」
 彼をというのだ。
「置くでおじゃる」
「そうすればですな」
「問題ないでおじゃるな」
「政と文の方は問題ありませぬ」
 この二つはというのだ。
「ですから」
「今川家の主としてはでおじゃるな」
「問題ありませぬ」
「ならいいでおじゃるな」
「人を見る目も持っておられ情もある方なので」
「よいでおじゃるな」
「左様です、ですから」
 彦五郎がそうした者だからだというのだ。
「拙僧もこれからもです」
「彦五郎にも教えてくれるでおじゃるな」
「そうさせて頂きます」
「頼むでおじゃる。しかし彦五郎は多才であっても」
 それでもとだ、義元は残念そうに述べた。
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