アイングラッド編
紅き剣閃編
Empty Dream―夢物語
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威力を横に流しながら再び、大太刀の一閃。大技を簡単にいなされた死神はすぐに動く事ができない。
レイの両腕が閃き、死神に次々と裂傷を刻む。
敵の攻撃は当たらず、自分の攻撃は当てる。
両刀がそれを相手の力を利用し、強烈な攻撃を放つ《柔剛》の極地だとすれば、この二刀の動きは《柔》だけを極めた、カウンター主体の剣技。万象を受け流し、技巧を以て敵を制す。
が、所詮はこの世界の技ではない。故に力負けすれば無力。
元々が本調子ではなく、しかも圧倒的力の前に打ちのめされていたレイに限界が訪れるのに時間はかからなかった。徐々に交代を強いられ、ついにその時がやって来た。
「…………っ!!」
小太刀の受けが上手く決まらず、横に流した途端、体勢を崩して膝をついてしまった。
勝ち誇ったように振り上げられる鎌、しかも後退させられたため、後ろにいたキリトとアスナも範囲内だ。
――と、その時。
とことこ、と小さな足音が聞こえた。
細い手足に長い黒髪。背後の安全地帯に居たはずのユイだ。
そのまとう雰囲気がわずかに違う気のした俺は何も言わなかった。
「ばかっ!!はやく、逃げろ!!」
キリトが必死に上体を起こそうとしながら、キリトが叫んだ。
だが、ユイは恐れなど微塵も感じさせずに死神と対峙すると、
「大丈夫だよ、パパ、ママ、にぃ」
言葉と同時に宙にふわりと二メートルぐらいの高さに浮いた。
そして、小さな右手を、そっと宙に掲げる。
「だめっ……!逃げて!!逃げてユイちゃん!!」
死神の鎌が赤黒い光を帯びて振り下ろされ、ユイの白い手のひらに触れる――
その寸前に、紫色障壁に阻まれ、大音響とともに弾き返された。
(……不死存在)
プレイヤーが持つはずのない属性、持っているのはこの世界の住人であるNPCや家などの建物、つまり、デジタルコードで作られた存在……。
ごうっ!!という響きとともに、ユイの右手を中心に紅蓮の炎が巻き起こった。それが俺の大太刀より大きな刀へ変化した。
ユイの着ていた厚い冬服が一瞬にして燃え散り、元々着ていたワンピースが現れる。
炎の大剣を、ぶん、と一回転させ、死神へ撃ちかかる。
死神が鎌で防御を試みるが、その鎌も熱で溶かされ、断ち切られる。
そのままボスへと振り下ろされる大剣。
轟音の裏にかすかな断末魔の悲鳴が響いた。
残り火がパチパチと音を立てる中、俺はようやく立ち上がるとユイの頭にポンと手を置いてそれから2人を助け起こす。
そのままよろよろと少女に数歩近寄る。
「ユイ……ちゃん……」
呼ばれた少女は僅かに微笑んでいたが、大きな漆
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