西暦編
第十話 リミテッド・オーバーB
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。
「……くそ……」
それを許さない存在があった。
数瞬前までと変わらない位置にいた進化体バーテックスも、さすがに無傷ではなかった。
その図体の半分が吹き飛び、花弁のような器官も二枚が辛うじて繋がっている状態だ。砲塔を兼ねた部位が欠損しているということは、すぐにあの魔力放出を行ってくる、ということはないだろう。
今なら撃破できるかもしれない。
「ぐ、ううう……ッ」
肉体は既に使い物にならない。魔術回路も空回りするばかり。
目の前の深手を負った敵に打つ手がない。
焦る士郎の視線は、進化体に近づいていく小型の群れを捉えていた。小型を取り込まれれば瞬く間に進化体は修復を終えてしまう。そうなれば、今度こそ四国の結界は破壊される。
足掻きは徒労に終わり、集結したバーテックスは悠々と進化体と結合しようと近づく。
そして、彼女は間に合った。
「あああああああああッッ!!!」
周囲に漂う小型を神速の影が蹴り跳ねる。
目にも留まらぬ斬撃に切り刻まれ、ぼろきれのような進化体に加速しきった若葉の刀が突き立った。
その一撃がとどめになったのか。
静かに消滅していく進化体と、その上に立つ凛々しい少女の姿を見て、
……確かに勇者だ、と。
消えいく意識の中で、士郎は妙な納得を得ていた。
【勇者御記】検閲済み
本日未明、大橋において冬木の人々の護衛任務に臨む。
私たちにとって初めての実戦で、危うい場面も多かった。連携訓練をしていなかったらと思うと今でも背筋が凍る。
冬木の勇者代理であった衛宮士郎さんの助力もあり、犠牲もなく、戦えない人々から負傷者がでることもなかった。だが、郡と高嶋に■■■を使用させてしまった。
我々勇者は、世界をやつらから取り戻すための矛。数が少ない以上無理は避けられないのだろうが……己の力のなさが憎い。
やつらに――バーテックスに報いを与えるためにも、さらなる鍛錬を積んでいかなければならない。
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