西暦編
第十話 リミテッド・オーバーB
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が現実に引き戻される。
宝具の破壊が加速する。もう、あと一秒も猶予はない。
目前の灼熱を前に、士郎の魔術回路が
「――――――――投影、開始」
限界を振り切った。
「――――熾天覆う七つの円環!!!」
再現できなかった七枚目、伝承においても砕けなかった最後の花弁が展開される。
目や鼻、耳からも血が滴るのを感じる。全身の血管が悲鳴を上げ、頭の中もかき回されたように痛みが起きる。
それら全てを無視し命を削って生み出した魔力を即座に盾へと叩き込んだ。この投影が保てなくなった瞬間が、士郎とそして四国の最期――!
「はぁ……ッ、がああああああああああああああああああああ…………ッ!!」
割れるような頭痛は意識の漂白すら許さない。
時間すら明瞭でない攻防の中、血に濁った士郎の瞳が信じがたいものを見た。
「■■■■■■■■■■――――!」
それは、巨大な魔力塊。
形成のためか魔力放出が弱まった一瞬だけ窺えた密度は、サーヴァントの宝具にも匹敵するほど。万全であっても受けられるか定かでないそれを、今の士郎が凌げる道理はない。
だが、一手先んずることが叶うならば、窮地も無二の勝機になり得る。
「投影、開始」
瞬間、士郎以外の時間が止まる。否、止まっていると感じるほどに彼の内部が加速しているのだ。
検索し、選出し、解析し、投影する。
身体に刻み込まれた手順は瞬く間に組み上がる。士郎の頭上、何もない空間に浮かび上がった剣は何でもない、ただ頑丈さが取り柄の無銘の剣――鈍らの器。
それを、今まさに放たれようとしている魔力塊へと射出した。
着弾の直前で自壊した鉄剣から小規模な爆発が起こり――――着火、
「……………………………ぅ、?」
気付くと、士郎は樹木の中にいた。
引きちぎられた枝がトンネルのような光景を作り出している。霞のかかった意識でなんとか、ここが神樹の結界の中だと判別がついた。
手足は――酷い状態だった。右腕は肘から先の感覚もなく、元から重傷だった左腕はねじ切れる寸前で妙な方向に向いている。両足は下手に踏ん張ったせいだろう、逆方向に曲がっていた。
おおよそ動ける状態ではない。
大雑把に診断を下し、脱力する。結界の損傷こそあったが、最小に抑えることはできたのだ。冬木の人々の避難も無事完了し、強力なバーテックスも退けることができた。根本的な状況の解決には全くなっていないが――今回だけ見れば、成果がないわけじゃない。
……どうだ、爺さん。少しは俺も、正義の味方を張れてるかな。
安堵すると共に、ずっと張りつめてきた糸が緩むように自我が闇に沈んでいく
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