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勇者たちの歴史
西暦編
第十話 リミテッド・オーバーB
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と覗く。

 瞬間、疵まみれの斧剣が勢いよく宙に放り投げられた。

「――――体は剣で出来ている」
 
 樹木の壁に食い込んだ岩塊は、花弁と正対するのに都合のいい足場になった。
 間髪入れずに詠唱を始め――――それが、もう遅いことは分かっていた。

「――――血潮は鉄で、心は――――、チッ」

 無音の絶叫/咆哮が空間を震わせる。
 すぼまっていく花弁はまるで砲塔のようで、直後……視界全てを白が埋め尽くした。

「――――熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)
 
 純白の魔力放出、それを食い止めた≪≪六枚花弁≫≫の盾こそは、士郎の有する中で最強の結界宝具。
 本来七つある守りは、一つ一つが古き時代の城壁に匹敵するほどの防御力を誇る。
 だが、

{IMG58936}

「……、ぐ……ッ!?」

 伸ばした右腕からブチブチと引き千切れる音がする。
 痛みを感じたのも一瞬、信じられない重圧を抑えようと砕けた左手を支えに回した。
 なけなしの魔力、その全てをつぎ込んだ護りを手放せば士郎の身体など一瞬で蒸発するだろう。
 
「ぐ、ォ――――あああああああああ……ッ!!」
 
 揺れる視界の中で、二枚の花弁が散った。
 残るは四枚――いや、減って三枚。不完全な投影で一秒でも長く押し留める。
 光量は以前変わらず、さらに二枚が弾け飛んだ。

「あああ、ああああああああああああああああああ!!」

 残る一枚――最後の盾にも亀裂が走っていた。
 割れた隙間から漏れ出た熱が衣服を焼き、樹木からは煙が上がる。砕かれるのは時間の問題、
 その限界を延ばすには、
                     致命的に魔力が足りない。

「      、       」

 最後の盾が砕ける寸前、脳裏をいくつもの光景が過ぎていった。
 今、この時までに見てきた景色。
 変わり果てた冬木の街、絶えることのない襲撃の日々、全てが変貌したあの夜。
 旅をした中で見てきた様々な国と文化、そこで暮らす人々の顔。衛宮士郎が救えた顔、衛宮士郎では救えなかった顔。ロンドンの街並み、時計塔での学び、出自から価値観から一人として同じではなかった魔術師たち。
 そして、第五次聖杯戦争。
 
 別れの言えなかった金髪の剣士がいた。
 現代を裁定しようとした金色の王がいた。
 飄々とした態度で手を貸した槍兵がいた。
 小さな主人を守ろうとした大英雄がいた。
 変化した願いに縋った魔術師がいた。
 疾風のように駆ける騎兵がいた。
 そして、
 赤き弓兵の双眸がこちらを真っすぐに射抜いていた。

『……お前の目指す正義の味方とはその程度か、衛宮士郎』

 皮肉の多分に含まれた問いを最後に、意識
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