西暦編
第十話 リミテッド・オーバーB
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く。
「連続勇者、パ――――――ンチッッッ!!!!」
千の拳撃が敵を砕くのに、数秒すらも要らない。
暴風が家屋を破壊するように、絶え間ない拳の嵐に襲われた進化体バーテックスは文字通り砕け散った。
友奈がバーテックスを倒したその瞬間を、若葉は複雑な想いで見ていた。
「……友奈……」
この戦いが始まる前、『切り札』を使うのは自分一人だけにしようと考えていた。
精霊の力を人の身に降ろす『切り札』は使用者の負担も大きく、大社は勇者に対してできる限り使うなと再三再四念を押していた。だからこそ、使う必要に迫られたなら自分がその負担を請け負おうと決めていたのだ。
だが結局、若葉は二度『切り札』を使用したが、友奈も一度、千景は二度も使っている。
自分で決めたことも守れず、何が勇者だろう。
傷つき、疲弊した仲間たちを見て、そう思わずにはいられなかった。そして、僅かに視線を巡らせれば、未だ多くの元凶どもが隙を窺い蠢いている。
気づけば刀の切っ先を向けていた。
「みんな、遅れてすまなかった! 勇者、乃木若葉! これより戦線に加わる!」
「若葉ちゃんカッコイイ――――!!」
歓声を上げる友奈の隣で、千景が「遅過ぎよ」と呆れ顔になっている。
全くもってその通りだ。意地を張らず、最善だけを考えれば彼女にここまで負担をかけることはなかっただろう。ここまで戦線を維持できていたのは、千景の頑張りによるものが大きい。
何事にも報いを――無茶をさせたのなら、今度は自分が無茶をする番だ。
「時間もそうかけられない。一気に行くぞ! 勇者たちよ、私に続け!!」
青い軌跡が再び死地奥深くに食い込み、消える。
そして――――
若葉が結界に飛び込む《《一分前》》、士郎は独り大橋にいた。
「……ここは任せて先に行け、か。気障なことをいうんだな、俺も」
厳しい視線の先には一体のバーテックスがあった。
先刻までの巨大な球状個体ではない。小型とサイズの変わらない、五枚花弁の華を想起させる形状の進化体。
それは、巨大バーテックスの内側に隠れ潜んでいた個体だった。巨体を形成していたバーテックスが分裂し、別方向から結界内へと大挙して侵攻する中でも微動だにしなかった。
移動しないのか、できないのか。後者の場合は撃破が難しくなる。
今の士郎は、弓を握れないのだ。
「投影の残弾はあと二回。リスクを取るなら手はあるが、」
危険性を検討している猶予もない。位置が変わらないからといって、動きがないわけではないのだ。
「――ッ!」
姿に異状なく、急速に膨張していく魔力の気配。
閉じ気味だった花弁は今や満開。
その奥に、眩い炎光がチラリ
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