西暦編
第十話 リミテッド・オーバーB
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「あ”ぁ”ッ!! スマン千景、友奈!」
無事に処理しホッと息をついたのも束の間、間髪入れずに球子の絶叫が聞こえた。
見れば、やたら曲線的な形状の進化体が形成されようとしている。
再び投じられた旋刃盤の刃があっさり弾かれたあたり、強度以外にも何か仕掛けがあるのかもしれない。
「もしかして、飛び道具が効かない……?」
「……なら、私が頑張る!!」
友奈の思考は即断即決だ。
刃が立たない相手でも、自分の打撃なら通るかもしれない。
確証もない推測にかけて、進路を遮る小型を殴り飛ばしながら矢となって駆ける彼女。肉薄するのに五秒とかからない。
「勇者、パ――――――ンチッ!!!」
轟音と衝撃。真正面から殴られたバーテックスは、しかし友奈の攻撃がまるで効いてないかった。
反動で痺れる拳を二度、三度と叩きつける。が、損傷どころか手応えすら感じられない。構わず前進を続けようとする敵の様子に、
「たとえ、効かなくったって!」
友奈の選択は力押しだった。
拳を構え直した彼女の周囲を暴風が渦巻く。その身に宿す精霊は『一目連』、その能力で束ねられた風が収束し両腕を包み込んでいく。
「何度だって、繰り返す!!」
瞬間火力と手数の増加。
それは実際、有効な一手だった。バーテックスは『斬撃』に特化した進化を遂げたが、唯一『打撃』を主体とする友奈相手にはせいぜい頑強な防殻程度でしかない。耐久を超える火力に曝されれば、撃破される可能性は十分にあった。
――――それは逆に、友奈が倒されてしまえば、勇者は対処する術を喪うということでもある。
「ダメです、高嶋さん!!」
杏の気づきも既に間に合わない。
僅か十メートル、あと一度の踏み込みで到達する間合い。
狙い通りに接近する獲物に向けて、バーテックスの外殻が勢いよく弾け飛んだ。
「!!」
それは厚い殻の表層でしかないが、それでも人間の頭ほどの質量はある。複数被弾すれば、いくら神樹の力が宿った勇者といえど致命傷は避けられない。
友奈は回避するそぶりも見せていない。塞がれた視界の向こうに存在する標的に、決定的な一歩を踏み込んでいく。
杏と球子はなすすべもなく、千景は蒼白な顔で携帯端末を握りしめた。
射撃も、旋刃盤も、分身体も間に合わない。
間に合うとすれば、一人だけ。
「――決めろ、友奈――!」
「ッ、千回、」
疾風と火花が舞い散った。
突然開けた友奈の視界にあったのは、両断され宙に浮く残骸と火花に彩られた進化体の姿。
迎撃を予想していなかったのか、奇妙な叫びをあげるバーテックスの硬い外殻に友奈の拳が激突する。
一撃、二撃、三撃、四撃――――回転は際限なく加速してい
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