オンラインRPG「リネージュ」オフ会殺人事件
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持つ男だろう。
まあ……拳銃を取り出してから決めることにしようか。
楽しい反応を見せてくれる奴から殺るのもいい。
俺はジャケットのポケットに、手を入れようとした。
だが――。
他の出席者が皆、先に手を動かしていた。
その先は、パーカーのポケット、畳まれた上着のポケット、バッグの中、ジャケットのポケット、リュックの中、さまざまだ。
そして全員が、L字型の黒いものを取り出した。
拳銃である。
その銃口は……すべてが俺のほうを向いた。
――は?
次々と鳴り響く銃声。
腹や胸に鋭い痛みが走ったのは、一瞬だけ。
頭にも強い衝撃を感じるとともに、すぐに痛覚はなくなった。
体が、ゆっくりと後ろに倒れていく。
「驚いたな。おれだけじゃなかったのか。今日こいつを殺すつもりで来たのは」
「私もびっくりですわ。でも今日のオフが決まってから、いろんな人に彼を殺してくれって言われてましたのよね。彼はツイッターで攻城戦をやっている血盟をネチネチとディスり続けていて空気が悪くなってましたので、私もぜひ死んで頂きたいと思ってましたの」
「ボクうまく撃てるかどうかドキドキだったけど、みんなで撃つんなら別にドキドキしなくてもよかったね。こいつ狩場で鬱陶しかったんだよねー。超スッキリした」
「自分も射撃訓練のためにハワイに行っていたのですが……この一斉射撃ではその必要はなかったかもしれません。でもこれで、ゲーム内の空気は確実に良くなりそうですね。彼はマナーが悪いので、オフが決まってから是非リアルPKしてくれという声が絶えませんでしたし」
「僕のところにも、彼のブログがウザいんで黙らせてくれっていうメッセージがいっぱい来てたな。来なくても個人的に嫌いだから撃つつもりだったがね。まあ、珍しく各血盟の足並みが揃ったのはめでたいことでは?」
「めでたいのはいいんだけどよ。これだけ派手な音だと騒ぎにならないか? おれはとっととズラかろうかな」
「ああ、それなら大丈夫ですわ。この店、実は私の実家が経営しておりますの。今日のためにこの部屋だけ一千万円かけて防音仕様にリフォームしてますのよ。音漏れはほとんどないはずですわ」
「すごいー。でも後始末はどうするの? ボクたち捕まっちゃうよね? そこまで考えてなかった」
「それなら心配には及びませんよ。自分の父親は官僚のトップですので、うまくもみ消してもらいます」
「それは心強い。やはり今日は素敵な日になった」
……。
もしかして、俺が一番嫌われていた?
遠のいていく意識の中、最後にそう思った。
享年三十二歳。
− 完 −
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