オンラインRPG「リネージュ」オフ会殺人事件
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明らかに不登校と思われる圧倒的なプレイ時間や、上場企業の社長という父親の財力で揃えた課金アイテム。それらを武器にトップをひた走っているとされている。
だが性格は酷く、情緒不安定なうえにわがまま。狩場がかぶるとすぐにPKを仕掛けてくるため、こいつがいると狩場を変更せねばならない。
当然プレイヤーの間では嫌われている。
「自分は一昨日までハワイに行っていました。オフに臨む心構えは現地で作ってきましたよ。まあ、少し緊張はしていますが」
この長い茶髪の青年は、ランキング二位の血盟の筆頭プレイヤーとして知られていた。
こいつも家が金持ちらしく、父親が官僚のトップという噂だ。よく自慢げに海外旅行の写真や豪華な料理の写真をSNSにアップしている。
ゲーム内ではマナーを勝手に決めて押し付けてくるプレースタイルで、主要な狩場のほとんどでこいつが決めたローカルルールがまかりとおっていた。
当然プレイヤーの間では嫌われている。
「僕も緊張しなかったと言えば嘘になるけど……。でも今日はきっと素敵な日になる。楽しみだね」
この三十代の一見パッとしない眼鏡男も、大手血盟の有名プレイヤーだ。
もちろん強いキャラを保有はしている。が、彼の有名な理由は使用キャラのスペックというよりも、彼自身の言動のほうにあった。
彼は全体チャット(※4)を頻繁に私的利用する「全チャ厨」である。持論や他血盟批判をダラダラ全体チャットで垂れ流し、プレイヤーを不快な気分にさせてきた。
そしてブログでの評論も極めてウザい。有名プレイヤーを根拠薄弱な理由で批判する炎上系の記事を投下し続け、多くのアクセス数を確保していた。
当然プレイヤーの間では嫌われている。
――さて、と。
俺は立ち上がり、テーブルから離れ、全体が見渡せるところに立った。
事前に知らせていた段取りでは、最初に幹事の俺があいさつをおこない、それからランキング一位血盟の彼に乾杯の音頭をお願いする……ことになっている。
だがこれから実際におこなうのは、あいさつでもなく、乾杯の音頭をお願いすることでもない。
ジャケットに忍ばせた自動拳銃を取り出し、全員を銃殺することである。
この日のために、密かに射撃の練習を積んできた。一発も外さずに全員をあの世に送り込める自信がある。
ここにいる連中はネット人間であるため、リアルで拳銃を見せられて冷静に対処できる者などいないだろう。万一反応できる人間がいたとしても、席は掘りごたつ式。素早く立ち上がることは不可能だ。
誰から撃ち殺そうか?
順番は悩む。
全員優劣をつけがたいほど嫌いだからだ。
だがここで悩めることが楽しい。これ以上ない幸福感がある。
俺は今、世界一幸せな悩みを
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