第六十四話 婚礼の話その三
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「どうしても、ただ竹千代殿が育ち」
「そしてですか」
「言われる通りに今川家の中で身を立てられるなら」
「そのこともですか」
「嬉しく思うでしょう、奥方を迎えて子をもうけられて」
「そうなれば」
「尚更です」
まさにというのだ。
「嬉しく思いまする」
「そのことも」
「まさに」
竹千代にこうも言うのだった。
「長く生きることの次でも」
「親は子にそう思うものでしょうか」
「そうだと思います」
まさにという返事だった。
「そなたも子が出来ればです」
「その時にですか」
「わかるでしょう」
こう言うのだった。
「やはり」
「では」
「はい、竹千代殿も」
「長く生きると共に」
「子もです」
それもというのだ。
「為して欲しいというのが」
「母上の願いですか」
「それもまたです」
「左様ですか」
「あくまで第一の願いは長く生きてもらうことですが」
それでもといのだ。
「是非です」
「それでは」
「それでなのですが」
また酒井が言ってきた。
「実はです」
「そろそろか」
「今川様もお考えの様です」
「前からそのお話はされていたが」
「正式な縁組をです」
それをというのだ。
「お考えになられて」
「それでなのか」
「はい、近々」
まさにというのだ。
「今川様からです」
「そのお話を頂けるか」
「そうなるかと」
「そうであるか、わしもか」
「奥方様をです」
「迎える時が来るか」
「そのお話になるかと。殿はです」
何といってもというのだ。
「今川様の傍におられ雪斎殿に教えを受けておられますな」
「やがて今川家の執権にとな」
「そこまでの方になられますと」
将来今川家の重臣の中でも特に位の高い者になろうとしているというのだ、酒井は今このことから言うのだった。
「やはりです」
「確かな奥方をか」
「持たれ」
そしてというのだ。
「しかとした家をです」
「持つべきか」
「まさに。そしてお子も」
「そちらもじゃな」
「多くもうけられるべきです」
「そちらもじゃな」
「そうかと」
こう主に言うのだった、そして実際にだった。
義元は竹千代に直接それも親し気に話した。
「そなたも奥をじゃ」
「そろそろですか」
「まだ元服をしておらぬが」
それでもというのだ。
「そろそろな」
「そのお話をですか」
「進めておく」
こう言うのだった。
「よいな」
「そうして頂けますか」
「和上と話して」
「お主には良縁の中の良縁を用意せねばな」
雪斎もいて竹千代に話した。
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