第五十話 父と子
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人を見た。
「あの、その、お養父さん、お願い行かせて下さい」
アニエスは、両手を組み神に祈るようにしてミランに懇願した。
その声色は、凛々しい雰囲気のアニエスとは真逆の、花も恥らう乙女を連想させた。
「うっうおっ、アニエス……何て可愛らしい……」
親バカな所のあるミランには、効果はバツグンだ!
「う、うぉっほん! 仕方ないな、参加を許そう」
「ありがとう、お養父さん!」
なし崩し的に折れたミランにアニエスは抱きついた。
(二人とも仲良くなれて本当に良かったわ……)
マノンは、じゃれ合う二人を見てホッと胸を撫で下ろした。
こうして、アニエスは養父母にアトラス計画参加を許されることになった。
ちなみに、養母マノンはアニエスの想い人を聞こうと思ったが、野暮と思い聞く事が出来なかった。
☆ ☆ ☆
……所変わって王宮では。
マクシミリアンは、所用で応急に出向き、エドゥアール王の執務室で談笑をしていた。話の内容はマクシミリアンとカトレアとのちょっとした夫婦喧嘩の事だ。
「……と、いう事がありましてね、カトレアに泣かれてしまいました」
「そう言われて始めて気が付いた。幼い頃からお前を働かせてばかりだったな」
「僕は好きでやってる事なんですがね」
「いくら、王太子が、次期国王が私事を捨て、王国に尽くさねばならないとは言え、10も満たない歳から政治に参加させている事を許容したのは、大人として、何より父としての無能を痛感している」
と、エドゥアール王は自嘲した。
「そう言わないで下さい。僕としては、好きにやらせてくれた事に感謝してますよ。自惚れるつもりはありませんが、そのお陰でトリステインは持ち直し、列強への階段を順調に上っています」
「そう言ってくれるか、マクシミリアン」
「歴史は父上を中興の祖を称えるでしょう」
「その名声は、お前にこそ、相応しいと思うが……」
「……?」
妙に元気の無い父王に、マクシミリアンは気が付いた。
「父上、何処かお身体が悪いのですか?」
「ん? どうしてだ?」
「覇気と言いましょうか。とにかく生命力が薄く感じるのです」
「ハハハ、何だそれは。マクシミリアンよく見ろ、こうして父は生きているぞ?」
エドゥアール王は、右腕で大して大きくもない力瘤を作った。
「そうですか……とりあえず、滋養強壮の秘薬を出して置きますから、後で飲んで下さいね」
「分かった分かった」
……
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