第一部
静寂(しじま)が沸き立つ
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こまでは何時もと同じ。
見た目は変わらない。
しかし頭の中で何かが開く。
そう、以前に一発で【音隼】を修得した時と同じ感覚の『あれ』だ。
(来た来た来た来たぁッッ!!!)
焔が腕を振り被るのが見えた。
しかし何も恐怖は無い。
繰り出された焔の拳に対して紫闇は折れた右腕をしならせ鞭のように叩き付ける。
強烈な爆発と閃光。
金色の魔晄が粒子となって弾ける。
焔が勢いよく吹き飛ぶ。
壁に叩き付けられた彼女を見て紫闇は脳が激痛で焼き尽くされていく。
「イヒッ」
紫闇の口から勝手に笑いが出る。
汗が、涙が、鼻水が、涎が、尿が溢れた。
「あぁ……堪らないねぇ。今の紫闇は凄く良いよ。とっても素敵だ」
焔はのそりと立つ。
左手の指をバキリと鳴らす。
上げられた彼女の顔に有る両の眼は紫闇を見据えて離そうとしない。
絶大な熱量が心を炙る。
その瞳は黒から赤になっていた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
焔が呵う。
顔に有るは恍惚と艶然。
その表情は紫闇が今までの人生で見た中で最も恐ろしく美しいものであった。
(構えろ。行くぞ)
覚悟を決めた紫闇に黒髪の鬼が近付く。
“七門の零“
二人が人と思えぬ声で吠える。
“混沌の解放“
熱くて痛い。
だが心地良い。
“我は虚無の顔に名を刻む“
紫闇に流れ込む何かは彼の血を、骨を、臓腑を、精神を真っ黒に染める。
“求むは苦痛“
焔の打撃は全てその身で受けた。
返礼に焔を打つ。
延々と続く応酬に両者の笑みは深まる。
まるで一つに繋がったかのよう。
“報奨は恐怖なり“
(良いぞ。もっと痛みをくれ)
紫闇も焔に対し出来ることを考える。
腕を折り合ったり
鼻を潰し合ったり
耳を千切り合ったり
目を抉り合ったり
(そんなことをしよう)
これは楽しい。
紫闇はやっと焔の教えを理解する。
(闘争は楽しいな。痛くて恐くて怖ましくて苦しくて。とても楽しいや。だから焔。もっと遊ろう。どちらかが何も出来なくなるまで)
気持ちよくて
ワクワクして
ゾクゾクする
“刻む我が名は“
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