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曇天に哭く修羅
第一部
静寂(しじま)が沸き立つ
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出すも、どんどん衝撃が伝わって息苦しくなってきた。

完璧に防げない威力は流石だ。

うんざりして頭が痛い。

体も熱く、気持ち悪くなる。


(自分は輝けるのだと証明したい。認められる英雄になりたい。物語の主人公で在りたい。《朱衝義人(あこがれ)》と同じ舞台に立ちたい)


その願いは許されないのか。

立華紫闇はモブキャラや背景で在り続けなければならないのだろうか。

(いな)

そのようなことは認めない。

例え神の決めたことであろうとも。

自分は絶対に受け入れない。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


焔が降り注がせる拳の隙間を突いて紫闇の貫手が彼女の喉へ放たれる。

読まれていたのか回避された。

互いの腕が流れるように絡まり肘の関節が極まると焔は紫闇の上半身を抑え込む。

ガチガチに固められ何も出来ない紫闇は痛みに『止めてくれ』と言いそうになった。

しかし彼は口を閉じて飲み込む。


(馬鹿か俺は。自分を殺すんだ。精神的に自殺するしか成長は無い。だから言うのは───)

「折れるもんなら折ってみろッッ!」

「それで良い。やれば出来るじゃないか」


優しい声の直後。

紫闇の肘は関節と逆に折れる。


「ぐぎゃあああああああああああ───────ッッッッッ!!!!!?」


彼の血管は切れそうになった。

刻名館の生徒を倒した時と同じく、まるで時間が止まったような感覚に包まれる。

緩んだ拘束を抜け出して蹴った。

焔は難なく避けたが動揺の色。

驚いて立ち上がる。

追うように紫闇も立つ。

何故か焔は笑っていた。


(腕は折れたが戦える)


紫闇は氣死快清をかけてもらわずにそのまま戦闘続行することを決断。

何故かと言うと《江神春斗(こうがみはると)》ならば腕の一本くらいどうしたと言わんばかりの態度を取るだろうと思ったから。

大英雄《朱衝義人(あかつきよしと)》も手足を失ったまま戦ったという逸話が有る。

だから紫闇もそうならなければならない。


(聖持やエンドの居る領域へ行くというのなら俺はそんな風になるべきなんだ。もう後戻りするわけにはいかないんだよ)


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「来いッッ! 焔ぁッッ!!」


天才だろうと人間は狂わなければ英雄達が集う戦場に辿り着くことが出来ないだろう。

そもそも狂うほど彼等と同じことをしたからと言って肩を並べられるとは限らない。

だからこその超人であり英雄。

だから狂え。

狂ってしまえ。

紫闇が折れた右腕に魔晄を圧縮させて黄金に輝かせるがこ
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