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戦国異伝供書
第六十三話 成長その十四

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「食して頂きたいです」
「それでは厨房の者に」
「作り方を聞かれますか」
「そうして」
 そのうえでというのだ。
「相模に帰れば」
「北条家のですな」
「厨房の者に言って」
 そしてというのだ。
「作らせまする」
「それがよいですな」
「それがしもです」
 竹千代も笑って言ってきた。
「贅沢なものですが」
「それでもであるな」
「この味、というか揚げたものが」 
 これ自体がというのだ。
「好きになり申した」
「だからか」
「はい、鯛だけではありませぬな」
「拙僧は豆腐が好きであるな」
「豆腐を揚げたものですか」
「これが随分と美味い」
 そうだというのだ。
「これはな」
「それでは豆腐も」
「鯛だけでなくでおじゃる」
 義元も言ってきた。
「多くの魚、海老や烏賊もでおじゃる」
「美味いですか」
「だからそうしたものも食うといいでおじゃる」
「それでは」
「さて、宴は続くでおじゃる」
 義元はあらためて話した。
「酒もあるし」
「能や和歌もでおじゃるな」
「そうしたものもでおじゃるよ」
 こう彦五郎に話した。
「楽しむでおじゃる」
「それでは」
 彦五郎は笑顔で応えた、そうして宴は続き竹千代は能や和歌にも触れていった。これもまた彼の糧となるものであり。
 屋敷に戻り家臣達に笑みを浮かべて話した。
「武芸や兵法だけでないな」
「他のこともですか」
「学ばれますじゃ」
「うむ、和歌も詠み」
 そうしてというのだ。
「能にも触れていこう」
「ううむ、三河者には縁が薄いですが」
「そうしたものは」
「それをですな」
「殿は学ばれていきますか」
「お主達もしてみてはどうじゃ」
 こう彼等にも言うのだった。
「一度な」
「殿が言われるなら」
「これまでどうにも武辺ばかりでしたが」
「それならば」
 三河者達も頷いた、そうして竹千代は彼等と共に和歌も詠みはじめた。


第六十三話   完


                2019・8・24
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