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曇天に哭く修羅
第一部
肉体言語
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ことでイメージだけの戦いに実戦の経験を加えて一段と早く成長していく。

紫闇は焔の正論にぐうの音も出ない。


(俺は英雄になる)


紫闇は不安を抑え組み手を申し込む。

焔は笑みを浮かべて魔晄防壁を全身に張ると、【魔晄外装】は出さずに深呼吸。

今の彼女は獰猛さを隠さない凶暴な獣が牙を向いたように恐ろしい。

紫闇は恐怖しながら外装を出す。


「基本的には盾梟(たてさら)の訓練と同じで常に魔晄防壁を張るんだ。そして攻撃は盾梟で防ぐ。でないと防ぎ切れないから。それじゃあ左拳で顔を殴るからね」

「組み手なわけだから焔の攻撃を躱しても良いけど今の紫闇には先ず無理だから兎にも角にも防御と予測に絞った方が良いぞ」


紫闇はレイアの助言を耳に入れる。

焔はゆっくりと構えた。

紫闇は彼女の動きを見逃すまいと凝視して攻撃に耐えられるよう踏ん張っておく。

刹那、焔の姿が消失。

時を飛ばしたかのように紫闇の前へ。

瞬く間に彼女の左拳が炸裂した。

嫌な音が口の辺りから響く。

焔の宣言通り顔面だ。

次に激痛。

間違いない。

これは───


(顎が折れた)


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


声を出す(いとま)は無い。

焔は直ぐに紫闇を投げ倒し馬乗りになる。

そして悪魔のように口の端を上げて拳を作りながら手の指をポキポキ鳴らす。

腕が振り下ろされた。

殴る、殴る、殴る。

紫闇の鼻が折れ、歯が折れ、頬が折れ、目が見えなくなっても容赦なく躊躇(ちゅうちょ)なく躊躇(ためら)わず拳の爆撃を降らせ沈黙させてしまう。

『粉骨砕身』という四文字熟語を人間の体で表すかの如く全く(もっ)て無感無情に攻撃を止めず紫闇の意識を奪い去った。


「これ、大丈夫かなぁ。体は意外と簡単に治せるけど心はそうもいかないよ? やっぱり最初は僕が戦った方が良かったんじゃ」

「兄さんは甘いからね。元々からして黒鋼のやり方はこんなものさ」


気が付くと紫闇は自分の足で立ち、対峙していたのだが違和感が(ぬぐ)えない。

体に怪我一つ無いのだ。

明らかに重症だったのに。


「ほら気を抜かない。相手に集中」


焔の髪に付いた鈴飾りから音がすると再び彼女の左拳が飛来するが今度は回避する。

しかしこれはまぐれ。

紫闇は何かを考えることも出来ず、無意識にメチャクチャな動きで対応を行う。

命の危機を感じた彼は自身が出来る可能性が有る攻撃の中で威力が最も高いものを本能的に選んだのか禍孔雀のイメージが脳裏に走る。

しかし放たれた黄金の右拳は未完成であり、掴んだ焔の左手で『ポン』と鳴っ
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