立花響バースデースペシャル
雨の上がった世界
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付けた。
「翔はわたしのだ……。気安く近寄るな……ッ!」
「ひっ!?」
ひと睨みで逆ナン女を怯ませると、響はそのまま翔の腕を引いて歩き去る。
……いつもの5倍くらいの強さでその腕を掴んで。
「痛い痛い痛い!響さん痛いってば!」
「なんでわたしが怒ってるのか、自分の胸に聞いてみたら……?このスケコマシ……」
「そんなつもりないってば!響さんが居るのに、僕が他の女の子について行くわけないじゃないか!」
分かっている。優しい彼は、親切心で道を教えようとしていただけだ。
そこに付け込まれてああなってしまっていたが、その優しさは彼の長所であり、それが自分を救ってくれた。
しかしそれはそれ、これはこれだ。自分以外の見知らぬ女に話しかけられていた事が、どうしても腹立たしい。
だからつい、こうして不満を炸裂させてしまっている。こうでもしないと気が済まないのだ。
(……わたしが翔に味合わせた気持ち、ちょっと分かった気がする)
2年前、惨劇の後。まだ中学生だった頃の響と翔を襲ったあの事件。
翔に歪んだ愛情を向けていた女生徒が、翔が少し目を離している隙に響を襲った事があった。
それがきっかけで、響は翔から離れてしまったのだが、今ので響は何となく、その時の翔の気持ちを理解した。
大切な人が遠ざかるかもしれないという不安。翔はそれを超える、大切な人に別れを告げられる悲しみを体験している。
あの日の自分が、彼にした仕打ちを後悔しながら、彼女はようやく翔の腕に入れていた力を緩めた。
「……じゃあ……埋め合わせてよ……」
「埋め合わせ……?」
響は振り返り、翔の顔をじっと見つめてそう言った。
「今日一日……わたしを、満足させてくれたら……許す……」
その全然素直ではない、可愛いワガママに、翔は微笑むと彼女をその胸に抱き締める。
「……お安い御用さ」
この日一日、翔は響の事をひたすら猫可愛がりし続けたという。
昼食を食べようと入ったレストランでは、注文を迷っていた響が選んだ料理と一緒に、もう片方の料理を自分の分として注文し、その上あーんで食べさせた。
移動する際は恋人繋ぎで手を握り、目的地だったスイーツ店のケーキバイキングでは、響の頬に付いたクリームを指で取って舐める、という大胆なイベントもこなしていた。
普段のヘタレは雰囲気は何処へやら。響の一言がリミッターを外したのか、今日の翔はいつも以上にグイグイと攻めてきた。
特に帰宅後は愛で方に拍車がかかり、寝る頃にはベッドの中で彼女を抱き締めながら撫でるわ触れるわ囁くわで、思いっきり彼女を甘やかし尽くしたらしい。
お陰で響はずっと顔が真っ赤だった。
「翔……わたし、何も
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