暁 〜小説投稿サイト〜
戦姫絶唱シンフォギア〜響き交わる伴装者〜
第6楽章〜魔塔カ・ディンギル〜
第62節「流れ星、墜ちて燃えて尽きて、そして──」
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 いつもと変わらぬ微笑みを、少しだけ曇らせながら緒川はそう言った。
「……緒川さん……」
 大気圏の向こう側で死を覚悟した際、緒川に伝えておけばと後悔した言葉。
 伝えるならば、今ではないのか?
 そんな想いに突き動かされながらも、翼は言葉に詰まる。
「……おかえりなさい、翼さん」
「ッ……!」
 先に言葉を発したのは、緒川の方だった。
 翼は先を越され、喉まで出かかっていた言葉を飲み込んだ。
「……た……ただいま……戻り、ました……」
 今の翼では、そう返すまでで精一杯であった。
 戦場では護国の剣として強く在る彼女も、恋愛となると初心にして奥手。本命に王手をかけるには、まだまだ遠いのであった。

「……ねえ、未来。ほら、見てよ。空ッ!」
 未来が泣き止み、響と翔は未来と共に立ち上がる。
 すると響は、空を指さしながらそう叫んだ。
「え、空……?」
「うんッ!これも流れ星、だよね?前に約束したでしょ?やーっと、皆で一緒に見れたッ!」
 満面の笑みで見つめてくる響。未来の顔からも、自然と笑みが零れていた。
「あ……。……うん。うん……ッ!響と、翔くんと……それから、皆で見る流れ星……凄く綺麗だよ……ッ!」
「ああ……そうだな……。とても綺麗な流れ星だ……。俺達が、この世界を守った証だ!」
 三人は一緒に空を見上げる。約束の流星雨は、その後も尽きること無く降り注ぐ。おそらく、今夜はもう暫く降り続ける事だろう。

 響は翔と未来の手を取って、三人で星空に願いを込める。
 また、三人の姿を見ていた純も、恥ずかしげに頬を染めるクリスに微笑みかけながら、その手を握って空を見上げた。
 翼と緒川も夜空を見上げ、降り注ぐ星雨を見つめる。
 こっそりと、緒川の小指へと手を伸ばす翼。すると突然、緒川の手が翼の手の甲をそっと包み込む。
 一方的に繋がれた手。翼は肩を跳ね上がらせて緒川の方を見る。緒川は翼の方を振り向くと、悪戯めいた目付きで微笑んだ。
 緒川の滅多に見ない表情に、翼は耳まで真っ赤になって硬直した。

 こうして世界を守る為、血を流し、涙を流して、歌いながら戦い抜いた者達を、星灯りと砕けた月が照らす。
 彼ら、彼女らの歩むこの先もきっと、多くの苦難や困難が立ち塞がるだろう。
 それでも、彼女達は俯かない。諦めない。
 何故ならこの世界には、歌があるのだから──。
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