第6楽章〜魔塔カ・ディンギル〜
第62節「流れ星、墜ちて燃えて尽きて、そして──」
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、今度は翼と二課の面々を見回した。
「まあ、12年間、退屈しない程度には楽しかったわよ……」
「了子くん……」
「だから、私は『櫻井了子』じゃなくて、フィーネだって言ってるじゃないの……。もう、本当に頑固なんだから……」
弦十郎に向けて、呆れたような微笑みを向けると、フィーネは最後に……目の前に並んだ二人を見つめる。
「……ふぅ。あなた達二人は、本当に……放っておけない子達なんだから」
そう言ってフィーネは、二人の胸の中心を、それぞれ指先でつついて言った。
「胸の歌を、信じなさい……」
そして……次の瞬間、フィーネは真っ白な灰へと代わり、風と共に崩れ落ちる。その消滅を、この場にいる全員が静かに見届けた。
代わりに、打ち込まれた矢が光り輝き、鏃を中心にして風に舞う灰が全て集まり、人の形へと固まっていく。
「…………っ」
「司令ッ!」
その形を見て、弦十郎は駆け出した。
やがて灰は一人の女性のシルエットを形作り、その輝きが一際強くなった瞬間、その肉体は元の姿に再構成された。
地に崩れ落ちそうになった彼女の身体を、弦十郎が支える。
「……ん……んぅ……?」
弦十郎の腕の中で、戻って来た女性……櫻井了子はゆっくりとその瞼を上げた。
「……あれ……私、何を……」
「ッ……了子くん……」
「……弦十郎……くん……?」
寝惚け眼で周囲を見回し、自分を支えている人物が誰なのかを認識して、了子は呟いた。
「私……何で、弦十郎くんに……」
最後まで言いきる前に、弦十郎は了子の身体をそっと抱き締める。
「……おかえり……了子くん……」
「……えっと……ただいま……?」
寝惚けながらも困惑している了子。その身体を抱き締める弦十郎の表情は──とても、安堵に満ちていた。
二人の様子を、五人の装者と八人の高校生、そして集まって来た何人かの職員達が見守っていた。
「……軌道計算、出ました。直撃は……避けられません」
弦十郎と了子、二人の再会の感動に浸る間もなく、藤尭は月の欠片の落下軌道の計算を終えた。
持って来ていた端末の画面を覗き込み、友里と緒川も歯噛みする。
「オイオイオイオイ!?あんなやべぇモンがここに落ちたら……」
「僕達どころか、この街は……いや、日本そのものが……」
空を見上げ普通の高校生達は、迫る危機に怯えていた。
しかし、響は真っ直ぐに空を見上げると……一歩ずつゆっくりと、歩き出した。
「響……」
「なんとかする」
「あ……」
振り返った親友の顔に、未来は何も言えなくなってしまった。
その顔はとても頼もしさと、決意に満ち溢れていて……止められる理由なんて何処にもなかったのだから。
「ちょ〜っと行ってくるから。生きるのを、諦
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