第6楽章〜魔塔カ・ディンギル〜
第62節「流れ星、墜ちて燃えて尽きて、そして──」
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西に傾く太陽の下。戦いが終わり、静けさを取り戻した街に、シェルターから出てきた人々が戻って行く。
崩壊し、瓦礫が溢れ、所々で煙が上がる街。しかし、その静けさに人々は、平和が取り戻された事を悟るだろう。
そして、崩れ落ちた魔塔の元に集った翔、翼、クリス、純、その他当事者たちの前に、敗北し項垂れる黒幕に肩を貸して歩いて来る、響の姿があった。
「お前、何を馬鹿な事を……」
黄金の輝きは失われ、もはや再生能力を失い、ボロボロに崩れ落ちていくばかりとなった青銅の鎧を纏うフィーネは、呆れたように呟いた。
「このスクリューボールが……」
敵であるフィーネにも手を伸ばした響の姿に、クリスも半ば呆れつつ、笑っていた。
「みんなにもよく言われます。親友からも、変わった子だ〜……って」
フィーネが瓦礫に腰を下ろすと、響はその隣に立ってそう言った。
「……もう終わりにしましょう、了子さん」
「私は『フィーネ』だ……」
「でも、『了子さん』は『了子さん』ですから」
「…………」
その言葉に、フィーネは少しだけ顔を上げた。
「きっとわたしたち、分かり合えます」
「……ノイズを作り出したのは、先史文明期の人間。統一言語を失った我々は、手を繋ぐことよりも、相手を殺す事を求めた……」
瓦礫から腰を上げ、フィーネは響や装者達、見守る二課の面々に背を向け、夕陽へ向かって歩いて行く。
まるで、自分と彼女達は分かり合うことは出来ないのだ、とでも言うように。
「そんな人間が、分かり合えるものか」
「人が、ノイズを……」
「だから私は……この道しか選べなかったのだッ!」
鎖鞭を握り締める、フィーネの手。
その手には悔しさと、そうなってしまった人類への哀しみが握られている様な気がした。
「……なら、どうして僕を助けてくれたんですか?」
「……なんだと?」
純はクリスの隣から歩み出ると、フィーネに問い掛けた。
「フィーネ……本当はあなたも、信じたかったんじゃないですか?人類が殺し合う事ではなく、手を繋ぐことで分かり合える事を。月を壊さなくても、言葉が違っていても、いつかはそんな未来がやって来ることを」
フィーネは純の言葉に答えることなく、ただ振り返る。
「歪んでこそいますが、本当のあなたはとても優しい人である筈だ。でなきゃ、僕はあの時、とっくにあなたの手で殺されている。……さっきの戦いでもそうです。手を繋ぐことを諦めたからこそ、あなたは絆を束ねて抗った立花さんを前にしたあなたは、ムキになってしまった。そうでしょう?」
「ボウヤ、それはあなたの勝手な……」
「思い込みかもしれませんね。それでも、感謝はさせてください。ありがとうございます。クリスちゃんにひもじい思いも、寒い思いもさせずに世話してくれて。僕に
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