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曇天に哭く修羅
第一部
殺意の壁
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来たら[脇固め]の形に持っていく)


問題はそこから。

その状態から肘を折りながら相手を地面に倒し伏せて頭に足を落とす。

下手をすれば死ぬ。

相手が死んでも良い古流の実戦技。


(人を殺せる技を見て興奮してるのか俺?)


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


紫闇はレイアと焔から喰牙の動き方を一工程ずつ説明してもらい、反復練習。

その後に喰牙(くうが)の修得に入る。


「実戦だと男女は関係ないけど最初はやり辛いだろうからね。僕に技をかけてみよう」


レイアの突きを(かわ)した紫闇だが技は失敗。


「この技に力は要らないよ。リラックスリラックス。体は羽毛のように軽くを意識して」


焔の言葉に紫闇は何度も練習する。


(やっぱり俺は運動の才能ねーな)


しかし根気良く続けたことで全体の流れや技の8割方は問題が無くなってきたので事実上は修得できたと言えるのではないだろうか。

だが焔は不満だったらしい。


「何で腕を折らないの? 転がした後の踏み付けも寸止めしちゃってるし」


彼女の冷めた声に怒りを感じる。

子供を叱るような。


「折らなきゃ駄目なんだよ紫闇。大事なことを教えるから覚えておいて。強くなりたいのなら『笑って』殺せるようになれ。でなければ上に行けないから」


レイアの言葉に紫闇は目を見開く。

紫闇は焔を失望させ破門になることを恐れた。

今の彼女はそう思わせる凄味が有る。


「出来ないなら僕が鍛えるか[改造]するしかないけどオススメはしない」


レイアの言う改造とは何なのか。

得体の知れない恐怖が襲う。

紫闇は覚悟を決めた。


(せっかく修業が始まったばかりのところだって言うのに終われない)


レイアが腕を伸ばすと紫闇の腕が絡まり肘を極めたままへし折られてしまう。

その感触に紫闇の脳が痺れる。

しかしこれで終わりではない。

続けてレイアの体が地面に引き倒されると潰すかのように頭が踏み付けられた。


(何だこの爽快感? 笑ってるのか俺?)


紫闇は心の奥から何かが流れ込み、自分が別の何かに変わってしまう。

そんな感覚に(とら)われる。


「良いね。その笑顔だ。一通り黒鋼を修得できた人間はみんなそんな風になる。例外は兄さんとエンドくらいだけど、それでも黒鋼一族(こっちがわ)の気は有るからね」

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