暁 〜小説投稿サイト〜
戦姫絶唱シンフォギア〜響き交わる伴装者〜
第6楽章〜魔塔カ・ディンギル〜
第58節「ただ、それだけ出来れば──」
[4/4]

[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話
ッ……ぅ……」
「……ッ!?」
 唇を重ねられた瞬間、響はその両目を見開く。
 そして次の瞬間……その身体を覆っていた影は、オレンジ色の光と共に弾けて消えた。

 翔が唇を離すと、そこには頬を濡らし、真っ赤に晴れた目でこちらを見つめる、最愛の少女の姿があった。
「……おかえり……響」
「……翔……くん……」

 次の瞬間、風を斬る音と、炎が噴き上がる音が空気を揺らした。
「ッ!?あれは……」
 振り向くとそこには、カ・ディンギルの頂上を目指して飛翔する、一羽の雄々しき不死鳥の姿があった。
 その両翼に迫る蛇の鞭に、翔は思わず叫んでいた。
「姉さんッ!」

 

(……やはり、私では──)
 ギアが砕け、破片が飛び散る。
 撃ち落とされ地へと墜ちていく中、翼は心の中でそう呟こうとしていた。
 力なく虚空を彷徨う身体。今度こそ、この翼は折れてしまった……そう思いかけた時、耳に届いたのは懐かしい声だった。

『何、弱気な事言ってんだ』

「あ……奏ッ!?」
 目の前に現れた彼女は、あの頃と変わらない微笑みを浮かべながら、その手を差し伸べて来た。
『翼……あたしとあんた、両翼揃ったツヴァイウィングなら──何処までも遠くへ飛んで行ける』

 奏の手を取り、翼は再びその目を開く。
(……そう。両翼揃ったツヴァイウィングなら──)
 落下していく身体で宙返り、その体勢を立て直して……翼は再び、その両翼(つるぎ)に炎を灯した。
「……ッ!」
「な──ッ!?」
「姉さんッ!」
 翼はカ・ディンギルを支える支柱を足場に、もう一度跳躍する。
 今度は険しい表情ではなく、自信と確信に満ちた雄々しい笑みを浮かべて。
(どんなものでも、越えてみせる……ッ!)
 再び襲い来る鎖鞭。しかし、今度こそは邪魔させはしない。
 その心に呼応するかのように、紅蓮の炎は蒼炎へと色を変え、蒼き翼の不死鳥は天高く飛翔する。

「Yes,Just Believe──!」

 生涯無二の親友と共に歌った、思い出のフレーズ。自らを奮い立たせるように叫びながら、翼はその両翼を羽撃かせる。
 飛び交う鎖を掻い潜り、月穿つ魔塔へと特攻していく不死鳥を……彼女が愛する者達が、涙を流しながら見上げていた。
「あ……あああ……ッ!?」
 見上げるフィーネの目の前で、カ・ディンギルの各部から光が漏れ出す。

 そして次の瞬間……カ・ディンギルは爆発した。
 辺り一面が白一色に染まり、強烈な閃光が戦場を、リディアン全域を包み込む。
 次の瞬間、大きな爆発音と吹き荒れる爆風、そして空には月を穿つ一撃の代わりに、炎と共に爆煙が立ち上った。
[8]前話 [9] 最初 [1]後書き [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ