第6楽章〜魔塔カ・ディンギル〜
第57節「男なら……」
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消え失せ、代わりにその下に押し込められていた気高き灰色が、再びその姿を現した。
「ッ!?馬鹿な、聖遺物の暴走を……ッ!?」
「うおおおおおおおおおおッ!テェアッ!」
影が弾け飛び、翔の姿は元に戻っていた。
「翔……」
「ありがとう、姉さん……。姉さんの声、確かに届いたよ」
「もう……ヒヤヒヤさせないでよ……」
涙を拭い、戻って来た弟に笑みを向ける翼。
だが次の瞬間、翔の方へと向けて鎖鞭が振り下ろされた。
「ッ!」
慌てて飛び退き、翼の隣に並ぶ翔。
フィーネは苛立ちを顕にした顔で、姉弟を睨み付けた。
「チッ。折角の余興だというのに、興冷めではないかッ!」
「他人の苦しみを余興扱いとは……やっぱ腐ってるじゃないか!フィーネッ!」
翔は怒りと共に拳を握り、フィーネを睨み返す。
しかしフィーネは当然のように、怯むことがない。
「だが、お前達が今更どう足掻こうと、カ・ディンギル二射目まではあと僅か……。それで私の勝利は確定だ」
「「果たしてそうかなッ!」」
「なに……?」
姉弟は声を揃えて返すと、互いに背中を合わせて構える。
「男ならッ!どんな逆境でも諦めないッ!それが大切な人を取り戻し、共に歩む明日を守るための戦いであれば、尚更だッ!」
「この剣はまだ、折れてはいないッ!この誇りはまだ、折られてなどいないッ!ならば私はまだ、戦えるッ!防人として……一人の姉としてッ!弟を、立花を……そしてこの街の、この国に住む無辜の人々を守る為にッ!」
「それがお前達の絆だとでも!?くだらんッ!絆とは、痛みだけが繋ぐものなのだ!そのたった一つの真実も理解できない青二才どもに、私の計画を邪魔されてなるものかッ!」
翔と翼は互いに目を合わせると、それぞれが向かうべき相手に向かい合う。
翼はフィーネへと、その剣の切っ先を向け、翔は響の動きを伺う。
「往くぞ、翔ッ!」
「ああッ!俺達は──」
「「──決して絆を諦めないッ!」」
瓦礫の山をから跳躍するフィーネと、地面を蹴って駆け出す響。
刀を構えて飛び立つ翼と、握った拳を開いて平手を構える翔。
絆を懸けた戦いが今、始まった。
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