第6楽章〜魔塔カ・ディンギル〜
第57節「男なら……」
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ばかりではなかった。
背後に聳えるカ・ディンギルもまた、その砲身に閃光を迸らせ、輝き始めた。
「──まさかッ!?」
「そう驚くな。カ・ディンギルが如何に最強最大の兵器だとしても、ただの一撃で終わってしまうのであれば、兵器としては欠陥品。必要がある限り、何発でも撃ち放てる。そのために、エネルギー炉心には不滅の刃、デュランダルを取り付けてあるッ!それは尽きる事の無い、無限の心臓なのだ」
自慢げに語るフィーネに、翼は刀を向ける。
「……だが、お前を倒せばカ・ディンギルを動かす者はいなくなる」
「フフフ……出来ると思うのならば、試してみるがいいッ!」
確かに、フィーネを倒せばカ・ディンギルは止まるだろう。しかし、目の前には敵味方の区別もつかなくなるほど、破壊衝動に飲まれてしまった弟と後輩がいる。
まずは二人を止めなくてはならない。翼は何度も打ち合いながら、その方法を考えていた。
(二人を元に戻すには……やはり、翔の意識を目覚めさせるしかない……)
翼は以前、緒川と了子から渡された、デュランダル護送任務の報告書の中で、翔が響の暴走を食い止めることが出来たという話を思い出していた。
響と共に暴走の破壊衝動に飲まれそうになりながらも、翔は意識を保ち、響を止めてみせた。間近で見ていた了子が煽るように、嬉々として語っていたあの話。もし本当だとすれば、翔の意識さえ戻せれば、自然と響をも元に戻す事へと繋がるはずだ。
(翔……頼む、私の声を聞いてくれ……!)
翼は視線を翔へと移し、真っ直ぐに見つめて叫んだ。
「翔ッ!何を寝惚けているの!あなたの大事な人が、すぐ傍で泣いているのよッ!」
「グウッ……!?」
翔の動きが一瞬止まる。
聞こえているのだと分かった翼は、更に強い口調で続けた。
「大事な人を守る為に、その拳は握られる……。大事な人が泣いてたら、その手で優しく包み込む……。あなたが目指している男って、そういうものじゃなかったの!だったら、今この瞬間こそがそうでしょうッ!?……お願いだから……目を覚ましてよ!翔ッ!」
翼の頬を、一筋の雫が滴り落ちる。それが地面に落ちた時、翔に変化が生じた。
「ッ!……姉……サん……?」
「……翔?」
唸るばかりであった翔が、言葉を発する。
釣り上がっていた目尻が降り、やがてその目の色は血のような赤から、元の青へと戻っていく。
「翔ッ!お願い、戻って来て!立花の涙を拭えるのは、あなたしかいないのよッ!」
翼の叫びが、塗り固められていた翔の意識を引き戻す。
隣に立つ響を見て、翔は姉の言葉の意味を理解した。
(──響が……泣いている……。なら、俺は……ッ!)
その瞬間、翔を覆っていた影が消えていく。
赤黒く、禍々しさを放つ影は
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